Party Time!!!
舞奈がいきなり復活、飛び上がり天に二本指を突き立て――周囲も一気に、スパークした。
「おおおー!」「すげーすげーすげーぞ小僧ー!」「なんちゅうアトラクションだ、激熱っ、上等上等――――っ!」「けっしからんッ! ……がよくぞわしらの弥生ちゃんを救ってくれた、大した若造じゃあ、カリ――――――――っ!!」
凄い大騒ぎにだった。みんなしてどこから持ってきたのか焼きそばやらお好み焼きやら焼き鳥やらカレー――
「なぁ、ゆええん?」
「なにかな、ろっくん?」
「カリーというのは、インドカレーのことなのか?」
「あははぁ、そんなわけないよぉ。カリーっていうのはぁ、沖縄で乾杯のことだよぉ?」
「ほう……乾杯、か」
「そうだよっ!」
そこでいきなり、後ろから抱きつかれた。また手那鞠か、とウンザリした様子で間六彦は振り返った。
そこで――
「っ!?」
不覚、この上ない。
間六彦は咄嗟にそう考えた。しかし実際のところ思っていたのは、全く別の事柄だった。
柔らかく、そして気持ちいい――
「じゃないっ!」
「ぷはっ」
間六彦は"引っ付いていた"弥生を引っぺがし、叫んだ。弥生はそれに"止まっていた息を"、吸い込んだ。
これでもかってくらい、満面の笑みだった。
「……どういうつもりだ?」
結構本気で怒っていた。
すると弥生は、涙目の上目遣いだった。しかも両手はぶりっこ握りこぶしで、あごの下に添えている。
「どうした、の? ろくひこ……いや、だった?」
「ぐっ!? ッ、ぅ……!」
これは、かつてない強敵だった。今までは気迫と根性があればどうとでもなったが、これはそういう手段が通じそうもない。というかそもそも勝負でもなんでもないという発想が浮かばなかった。
「どうなの……やっぱわたしみたいなのとじゃ……いや?」
「え、どうしたのどうしたのー? なになに盛り上がってるのー?」
嫌なタイミングで空気読まないやつが、キタ。
間六彦は珍しく、狼狽する。
「や、いや……な、なんでもないからお前はチョコバナナでも食って――」
「やよよんとろっくんがぁ、チューしたんだよぉ」
そういえば、天然よりも狙ってこういうことをやる小悪魔っていうか悪魔そのものな女が傍にいることを、失念していた。
「な――――」
「へ?」
「ねぇえ?」
呆気にとられる舞奈だが、柚恵は駄目押しまでする。もう、誤魔化しようもない。
間六彦は咄嗟に、弥生の手首を掴む。
「ふぇ?!」
「ぐっ!?」
途端に激痛が走るが、構わず――一気、駆け出す。
すると後ろから、無数の声が追いかけてきた。
「お、お前間本当に我らが天使神ノ島さんの唇を……!?」「そ、そんな行為どころか我らはお、お手さえ握らせてもらったこと、はおろか……お声を掛けていただいたことすら無いって言うのに……!」「てめぇ、許さん……絶対、許さないからなッ!」「けっっっしから――――ん、若造キサマ、う、羨ましいぞォォオオオオオオ!!」
「爺さんあんたは何言ってんだァアアア!!」
「あははははー六彦おもしろ――――いっ!」
「俺ハッ、面白く、ないッ!!」
「アハハはハハハハハっ!!」
一喝しても、弥生はこれ以上ないほどに高笑いを続けるだけだった。そんな最中でも後ろからの追っ手は数を増し、もはや視界一杯にという有り様だった。しかもなぜか老若男女問わず揃っており、みんな憤怒の表情だったらまだ理解できるが半分以上笑っているというのが納得出来なかった。お前らただ単に面白がってるだけだろう!
「だーくそっ! なんでオレが逃げなきゃなんねーんだよッ!!」
「六彦」
「なんだッ!?」
「……ありがとね?」
いきなり素の謝礼なんて、反則だった。
間六彦はドタバタタタっ、と猛烈なスピードで足を運ばせながら、ガシガシと頭をかいた。痛いとかもう超越していた。どうしたもんか? しかし弥生は弥生でそれだけ言って、顔を伏せて黙り込んでしまうし。あー、と間六彦は更にガっシガシっ、と猛烈に頭をかく。
「その、なんだ……あのな?」
「…………」
やはり弥生は反応ナシ。放っておく気楽さと武道家としての矜持を天秤に掛け、即決。このまま一方的なままでは、男が廃る。
しゃーねー!
「…………オレも、お前が好きだ」
弥生は目を点にして、
「――どーじょー?」
「違う……」
「じゃあ――」
「単純に、気持ちの問題だ……前回は、自分の心を曝け出せずに、俺は……」
そこまで言えば、さすがに察することが出来ると期待した。そしてチラリ、と窺うと――弥生は顔を真っ赤にしていた。
それを不覚にも、間六彦はカワイイと思ってしまった。
おきけんっ! ~ 間六彦とグレープフルーツ姫~ 青貴空羽 @aokikuu
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