血で書かれた文字を読め

 ―――読むに値するのは血で書かれた文字のみである。昨今通信技術の発展は書くことの意義を変革し、万人は詩人となった。されど、人差し指一つで書かれた歌に人を動かす気概があらんや。電子を漂う物語に人の生を刻む深みがあらんや。堕落し、腐敗した精神を治癒するものはただ真の文学のみである。血で書かれた文字を読め―――



「長いダイイングメッセージですね。いやこの場合、遺書って言った方が正しいのかな」


 小さな書斎。うず高く積まれた本に溺れているかのような状態で、ある作家の死体が見つかった。死因は餓死である。


 この血はきっと犯人を指し示している。それが自分では無いことを祈りたい。

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