こんにゃく殺人
殺人事件の通報を受けて現場に急行した警察官。見れば四畳一間の汚い部屋で、うつ伏せに倒れた男と、その側に立ちすくむ男。
「私がやりました」
「通報したのはあなたですね。詳しく現場を調べさせて頂きます」
警察官は倒れている男を調べ始めた。目立った外傷はない。耳を澄ませると息もある。
「……これ、寝てるだけじゃないですか?」
「彼は幸い助かりました。しかし、私が彼を殺そうとしたことには変わりありません。私は自分の罪を償いたい」
「そ、そうですか。では、詳しい話を聞かせてください。凶器はなんでしょう?」
「これです」
男はキッチンからあるものをもってきた。
「彼と口論になって激情に駆られた私は、これで彼を」
「……ちょっと待ってください。あんたこれで人刺そうと思ったんですか?そりゃ無理でしょう」
そこには白い皿に盛られたこんにゃくが一枚。
「出来るか出来ないかじゃない、殺るか殺らないかでしょう」
「いや上手いこと言って誤魔化そうとしても、ダメですよ。というか上手くないし、殺れてないし」
「考えてみてください。たまたま持っていたナイフがなまくらで人を殺せなかったなら殺人未遂でしょう? ではたまたま持っていたこんにゃくがふにゃふにゃで人を殺せなかったなら殺人未遂になりますよね」
「ふにゃふにゃじゃなかったらこんにゃくじゃないでしょ」
「とにかく、私は殺意を持って彼を刺した。逮捕して下さい」
「あのねえ、警察官も暇じゃないの。なんでこんなことしたの」
「それはもちろん彼に対する溢れんばかりの憎悪が私を」
「なんで?」
「……こんにゃく以外の飯が食いたかったからです」
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