虹を探して*
「あら? 奇遇ですね」
雨上がりの空にかかるアーチの下でうつむきがちに歩いていると、僕らは再び出会った。キャンバスのような美しい白肌の彼女はいつも鮮やかな虹を連れてくる。僕は運命というものを感じていた。
それから僕らは自然に付き合いだし、普通にデートし、ありふれた結婚をした。少しかわったことがあったとしたら、記念日にはいつも虹がかかっていたことぐらいだろうか。
暖かな日差しが降り注ぐ昼下がり。僕は彼女と洗濯物を干しながら、ふと思い出したように聞いてみた。
「そういえばさ。彩香と出会った頃っていつも虹がかかってたよね。……もしかして僕のことストーキングしてて虹が出た瞬間に声かけてたとか」
「そんな訳ないじゃない! いいわ。私の凄さを見せてあげる」
彼女は霧吹きを家の中から持ってくると、僕の目の前に何度も水をかけた。暫くすると7色のグラデーションが小さく浮かび上がった。
「ほらね? 虹は探すものじゃなくて作るものなのよ」
雨上がりの空に太陽があればそこに必ず虹はかかる。なぜ彼女はいつも虹とともにやって来るのか、僕は分かった気がした。
*八ヶ岳南アルプス様の同名のショートからタイトルを頂きました。ありがとうございます。
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