平均を制するものは試験を制す

「中間テストの前日何時まで勉強した?」


連れの浜田が聞いてきた。勉強のべの字だけで逃げ出すようなやつなのに、珍しい。まあ期末テスト前日ではあるのだが。


「夜10時くらいまでだけど」


「はいはい22時ね。俺全然勉強してねえわー的なのいらないからな」


「本当だって」


変に自信に満ちた立ち振舞いに疑問を感じた俺はたまらず尋ねた。


「それがどうしたんだ?」


「ふっふっふっ。よくぞ聞いてくれました。俺はこれまでの失敗から学んだのさ。自分で勉強時間設定するからダメなんだ。みんなの勉強時間の平均とったらそれが一番ベストだと思わねえ?ちゅーよーてやつよ。よく分かんないけど」


「そんなことしてる暇あれば勉強しろよ」


「あん?見てろ。今回のテストでぎゃふんと言わせてやるからな」


―――次の日。

「すいません遅れました!」

試験開始10分後になってようやく浜田は現れた。目の下に隈をこさえて。


試験後、見るからに元気のない浜田に俺は声をかけた。


「おつかれ。昨日結局何時までやってたんだ?」


「8時まで」


「あれ?よく寝てんじゃねえか」


「朝の」


「は?」


「だって平均が8時になったんだもの」


「ちょっと計算式見せてみろ」


俺は浜田が取り出したノートをひったくった。


「えー、22(中島)+23(岩瀬)+1(中谷)・・・なるほど」


「な、間違ってないだろ」


「ああ間違ってない。が、お前は平均からやりなおせ」

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