なごり雪

おい、まだそんなこと言ってるのか。

怒るぜ、俺。

お前は汚くなんかない。

確かにドラム叩いてる時のお前もいいけど、ハレ姿のお前、最高だったぜ。

馬子にも衣装っていうもんな。

ははは、怒んなよ。


ま、とにかくだ。お前は茶の間でせんべいかじりながらテレビでも見てればいいんだ。

いつかそこに映ってやるからよ。

「結婚なんてするんじゃなかった! 」って後悔させてやるからよ。


そろそろか。

じゃあ、元気でな。

たまには手紙出せよ。

野菜とか送ってくれよ。


おめでとう。

お前は綺麗になった。



―――遠ざかる電車を見送る俺の肩には季節外れの雪が降っては溶けている。


俺も本当はなごり雪。

いつかは溶けると知っているのだから。

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