企業秘密

「このスープ、作り方教えてもらえませんか」


「申し訳ありません、企業秘密ですので」


 シェフはそう言って踵を返した。早く次のスープを出さなければならない。シェフはレトルトの容器を開けた。



「このスープ、作り方教えてくれませんか」


「申し訳ありません、企業秘密ですので」


 工場長はそう言って踵を返した。早く今日のノルマを達成しなければならない。工場長は正体不明の材料を混ぜ合わせるように指示した。



「このスープ、作り方教えてくれませんか」


「済まないが、企業秘密なのだよ」


 社長はそう言って踵を返した。早く新しい商品を開発しなければならない。社長は商品開発チームに喝を入れた。



「美味しいスープの作り方、教えてくれませんか」


「いいですよ。まず……」


 カテゴリーマスターはアンサーを返した。

 早くコインを集めなければならない。カテゴリーマスターは適当にレシピを考えた。


 カテゴリーマスターは、最近流行りのレストランに足を運び、舌鼓をうった。特にこのスープが素晴らしい。堪らずシェフに尋ねた。


「このスープ、作り方教えてくれませんか」


「申し訳ありません、企業秘密ですので」


 秘密は時に己の存在を隠す。

 人からも、そして企業からも。

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