エピローグ
――7年後。
もう何度目だろうか。
“バッグの中のスマートフォンの画面を確認しては、ため息を出して頬杖をつく”。
――という非生産的な行為をこそこそと繰り返しているのは。
もちろん授業になんかこれっぽっちも集中できない。
こうなったらいっそのこと、品行方正で模範的な生徒という肩書を捨てて、マナーモードを解除したスマートフォンを机の上に置いてやろうかと思うくらいだった。
(はあ、……こんなことなら最初から学校を休んで傍にいればよかったかも)
後悔がこびりついて離れない。
そしてまた例の非生産的な行為をしたとき、後ろの席から右肩を叩かれた。
横目で見やると差し出されたメモ用紙。
後ろの席の、みっちゃんからだった。
『スマホ見すぎだよー。何? 彼氏? あ、いないっけ。だったらストーカーっ!? ただ今三葉弁護士事務所、相談受け付け中』
小鞠は鼻の下に指をやりクスリと笑うと、返事を書いて渡す。
『ストーカーじゃないよ。お兄ちゃんからのメール待ち。心配してくれてありがとう』
そしてまたみっちゃんからのメモ用紙がきたところで、小鞠は(もしかしたら……)とメールの確認をさきにする。
「あっ」
思わず声が出る。
クラス中から集まる数多の視線。
「平兵さん? どうかしたのかしら?」
先生の
それは予定にはない行動。
だけど居ても立ってもいられなくて、その言葉は自然と口からすべり出ていた。
「先生すいませんっ。姉が交通事故にあって病院に運ばれたようなので今日は早退させて頂きます――ッ!」
「えっ? そ、それは大変ね。ええ、早くお姉さんのところへ行ってあげなさい」
「はい、失礼しますっ」
クラスメイトの同情の声に罪悪感を覚えつつ、小鞠は足早に教室を出る。
そして廊下を走って下駄箱につくと、深呼吸をしたのち、もう一度凡にぃからきたメールを確認する。
『生まれた。来るか?』
短くも簡潔な、凡にぃらしいメール。
見間違いではない。
本当の本当に生まれたのだ。
「よかったね、がんばったね、ロゼリアお姉ちゃん……」
小鞠は目頭を押さえる。
靴を履いて外へと出ると、快晴の空に珍しい光景が見えた。
太陽のそばで虹色に輝いている
吉兆を表すそれは、もしかしたらあの二人だけのために現れたのかもしれないな、と思う小鞠だった。
お・わ・り
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