えぴそ~ど33 「平凡クラッシャー ―セカンド・フィアー―(食後)」
「あらぁ、その可愛い子は誰からしらぁ? ロゼリアちゃんのお友達ぃ? 丁度良かったわぁ。お料理いっぱい作ってきたから、あなたも遠慮せずに食べてねぇ」
との胡桃子さんが部屋に入るなり、てきぱきと自作の料理をちゃぶ台に並べだす。
そして「今日はいつもより、おいしくできたのよぉ」と柔和な笑みを浮かべると、タッパーのフタを開けた。
この前と全く同じヘドロ料理が現れた。
どこがどう、おいしくできたのでしょうかっ!?
漂ってくるアラバスター数値10000越えの臭気(世界一臭い食べ物、シュールストレミングで8070)……のはずが、全くそんなことはなかった。
完全なる無臭だった。
うっそっ! マジで臭わないじゃんっ!
アラモードは気に食わないけど、『オイシクナール』の魔法には感謝ねっ。
あ、ということは味もおいしくなっているってことよねっ!
「う、うまいっ! 胡桃子さん、これ本当においしいです。いつもより断然……あ、い、いつものももちろんおいしいですが、今日のは特においしいです」
「そうなのです。本当においしいのです。見た目はともか――と、とにかくとってもおいしいお料理なのです」
演技とは思えないほどに、ヘドロ料理に
本当に美味へと変化しているらしい。
「嬉しいこと言うじゃないぁい。やっぱり上達してきているのかしらねぇ。さぁ、ロゼリアちゃんも食べてぇ。すんごぉいおいしんだからぁ」
そんな二人にご満悦の胡桃子さんが、私に食べてみてと
「そ、そうですね。食べさせていただきますっ。このヌメヌメと黒光りしているのがとっても食欲をそそりますねー。あー、おいしそうー。いただきまーすっ」
ぶっちゃけ見た目はクソよ。
でも、味が良ければなんとかなるわね。
私はスプーンで料理をすくって口に入れる。
――
味覚神経が、それは危険だとけたたましく警報を鳴らす。
つまり、味も前回と同じくクソだった。
同時に、さきまでなかったはずの刺激臭が
「ぶっはああああああああああっ!! げはっげほっぶへぇっ! ち、ちょっとどうなってんのっ? すっげー、マズいんだけどっ!! ア、アラモード、あんた魔法で美味しくしたんじゃなかったのっ!? ……はっ! まさかあんた、私が料理を口に入れた瞬間、魔法を解除したんじゃないでしょうねっ?」
「まほー? ナニソレ?? そんな非科学的なものが存在するはずがないのです。ところでロゼリアさん、今とってもひどいこと言ったのです」
「え……? あ」
――すっげー、マズいんだけどっ!!――
言ってた。
とってもひどいことを。
私は
「ひ、ひどぉい、ひどいよぉ、一生懸命ぇ気持ちを込めて作ってきたのにぃ……。ふえぇ、ふえぇ、ふええええんっ。ロゼリアちゃんのばかぁ」
大粒の涙を流して、部屋を去る胡桃子さん。
「ち、ちょっと待ってくださいっ、胡桃子さんッ! 今の嘘っ、嘘ですから、ちょっと――んがっ!?」
追いかけようとした私の頭部を凡介につかまれる。
強制的に向きを変えられた私は、鬼の形相の凡介と対面した。
「貴様、自分が何を言ったか分かっているのか?」
「つ、つい出ちゃったのよっ。だって魔法で美味しくなってると思ってたんだもんっ! なのに、なのにっ、……ぜ、全部アラモードが悪いのよっ! こいつが魔法を解除しなければ――はぎゃ!?」
ミシッと頭が鳴る。
「いい加減にしろ。魔法など架空のゲーム的小道具にすぎない。だいたい今日の胡桃子さんの作った料理は本当にうまかった。それを本人を前にして
「技掛けるのです、凡介様。そんなひどいことを言う年増の女神には、最強の技を掛けたほうがいいのです」
諸悪の根源であるアラモードが余計なこと言う。
そして頷く凡介。
「!? お願いっ、止めてっ! 最強の技とか出すのまだ早いと思うし、それに私、今から胡桃子さんに謝罪しに行くから――」
「食らってから行け」
言うが早いか、凡介は私の体を持ち上げると逆さにする。
次に、おっぴろげた足を両手でつかんで首を自分の肩口で支えると、技を開始する合図かのように呟いた。
「平兵家に伝わる四神技の一つ、平兵バスター」
そして凡介はその状態でジャンプすると、
がっはあああああああああああッ!!
――――――――――――――――――――
ロゼリアの首、背骨、そして股関節に大ダメージっ。
ロゼリアは謝罪に行けなくなった。
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