えぴそ~ど53 「熱戦・烈戦・超激戦っ!! ―VS妖艶姫デボネイア―(2)」


「リザードファット――じゃないわね。もしかしてあなたが召喚した使い魔かしら?」


 デボネイアは眉根を寄せてアラモードに問う。


 その様は、一見して不快感に満ちている。

 しかしアラモードは、そこに“怯えのようなもの”も垣間見ることもできた。


「ち、ちが……そうなのですっ。召喚魔法『デテコイヤ』によってアラモが召喚した最強の使い魔――えっと……あ、シコシーコなのですっ。アラモを攻撃すると、シコシーコがお前に倍返しするのですっ」


 それはもちろん嘘。

 しかし、デボネイアの悪意を自分から逸らすことはできた。


 この隙にと、アラモードは現在使える三つの魔法の中から、相手のステータスを数値化して見る魔法、『ミーセテミ』を使用する。

 何か、起死回生に繋がるヒントがあるかもしれないと思ったからだ。


 ちなみにあと二つの魔法は『カナシバリー』と『オイシクナール』である。



 ――――――――――――――――――――

 HP    72,000

 NP    15,600

 ちから      310

 すばやさ     455

 かしこさ     387

 こうげき力  1,700

 ぼうぎょ力  2,341


【スーパー必殺技】

 女王様とお呼びっ!!


【ウルトラ必殺技】

 足掻あがくのよ、もがくのよっ、ひざまずくのよッ! ――アーッハハハハハハッ!!


【弱点】

 醜いもの全般

 ――――――――――――――――――――


 

(弱点、醜いもの……はっ、なのですっ)


 そこでアラモードは、デボネイアの“怯え”に合点がいく。

 志湖シコ郎は醜いからだ。

 いや、今日に限って言えばその醜さに磨きがかかっていて、なんだか別の怪奇生物のようにも見えた。


「くぱぁ、くぱぁ、くぱぁ、くぱぁ」


 その志湖シコ郎――シコシーコがデボネイアににじり寄る。


「ち、近寄るんじゃないわよっ、この醜悪な化け物めッ!」


 明らかに怯えているデボネイア。

 そのデボネイアの鞭がシコシーコに直撃する。

 でもシコシーコは何事もなかったかのように、真っすぐデボネイア目掛けて歩き続けた。


「くぱぁ、くぱぁ、も、元女神の、くぱぁ、くぱぁ」


「き、効いてないのっ? くっ、これならどうっ!? 『女王様とお呼びっ!!』」 


 デボネイアのスーパー必殺技がシコシーコにクリーンヒット。

 しかしやっぱり効いていないのか、シコシーコは前進を止めることをしなかった。


「ア、アラモたん、だめ、ロゼリアたん、だめ、だ、だからデボネイアたんの、くぱぁ、したい。たくさん、くぱぁ、したい」


 「ち、ちょっとどうなってんのっ? 鞭への耐性100%なんて聞いたことがないわよッ!? それと『くぱぁ』って何っ? あたしに何をする気なのッ!? ――ち、近づくなあああああッ!!」


 半狂乱になったデボネイアが鞭を振り回す。

 今や、デボネイアの意識は完全にシコシーコに向いている。


 アラモードは堂々と、今度はシコシーコのステータスを確認する。

 攻撃無効化の理由を知りたかったのだ。



 ――――――――――――――――――――

 HP        29

 NP         0

 ちから        5

 すばやさ       2

 かしこさ       1

 こうげき力     12

 ぼうぎょ力     16

 女神愛  827,000


【アルティメット必殺技】

 くぱぁ

 ――――――――――――――――――――



 知らないステータスがあった。

 しかも異常に高い数値で、それはデボネイアの攻撃を食らうごとに1000づつ、上がっていた。

 どうやら、(元)女神からの攻撃を全て吸収する特別なユニークステータスらしい。


(ほ、ほかのステータスはスラ〇ム以下のくそザコなのに、この『女神愛』だけ凄いのですっ。そしてアルティメット必殺技の『くぱぁ』……。これはクソババアデボネイアと一緒でアラモもよく分からないのです。でも多分、物凄い技なのです。――よし、なのです)


 アラモードは、『カナシバリー』の魔法を唱える。 

 それはもちろんデボネイアに向けてであり、『カナシバリー』を食らったデボネイアは鞭を振り上げた状態で固まった。


「な、なに? か、体が、動か、ないっ? ……お、お前がした、のか?」


 黒目だけをアラモードに向けて聞くデボネイア。


「そうなのです。シコシーコのアルティメット必殺技、『くぱぁ』を逃げずに食らってもらうためなのです」


「こ、この、ガキ……ッ い、今すぐ、解除しろっ……そ、そうすれば、命だけは、奪わずにいてやる」


 いかにも、今から負ける悪者らしいセリフを述べるデボネイア。

 その顔は異常に発汗していて、微動を繰り返している。

 三メートルの距離まで近づいた、シコシーコへの恐怖からだと思われた。


「いいから黙って、『くぱぁ』を食らうのです」


「その『くぱぁ』って、本当に何なのッ!? た、頼む、お願いだから、それを教えてくれ――ッ!」


 やっぱり今から負ける悪者らしく、てのひらを返したようにアラモードにすがりだすデボネイア。


「知らないのです。でもとてつもなく恐ろしい技なのは間違いないのです。だって『くぱぁ』なのです」


『くぱぁ』――。


 たった三文字の平仮名から漂う、尋常ならざる絶技の香り。

 前代未聞、空前絶後の光景に立ち会えるかのような、そんな予感を抱きながらアラモードはそのときを待つ。



「くぱぁ、くぱぁ、デボネイアたんの、くぱぁ、くぱぁ」


「く、く、来るなっ、来るなあああ――ッ」


 あと一メートル。

 シコシーコの顔が怪しく歪む。


「くぱぁ、する、くぱぁ、する、元女神、デボネイアたんの、くぱぁ、する」


「ひ、ひいいいいいいいッ!!」


 そして十五センチメートルの距離となったとき、シコシーコが

 デボネイアの巨乳があらわとなり、やけに面積の小さい紐パンツまでがアラモードの視界に飛び込んでくる。


(きゃー、な、なんなのですっ!? え? え? きゃー)


 手で目隠ししつつも指の間から覗くアラモード。



 ――――その扉の先は禁断の世界。子供は見るな――――

 ――――その扉の先は禁断の世界。子供は見るな――――

 ――――その扉の先は禁断の世界。子供は見るな――――

 


 そのときアラモードの脳内で鳴り響く、制止をうながす声。

 でもそんなことを言われたら見たくなるのが、カリギュラ効果である。


(見たいのですっ。だから扉を開けて禁断の世界へ飛び込むのですっ)


 アラモードは顔に当てた手はそのままで、刮目かつもくするかのように瞳をカッと見開く。

 

 しゃがんだシコシーコがデボネイアのパンツを凝視している。

 するとその手をパンツの紐に伸ばし、やがてゆっくりと――、


「やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめ――」



 


 

 デボネイアの念仏のよう懇願が止まり、次の瞬間、その表情に[怖気]と[絶望]という色がぶちまけられた。

 そして――それはまるでタキサイキア現象のようにスローモーションとなって始まった。




「デェボォネイィアァたんのぉぉ、くぅぱあああぁぁぁぁ」




(―――――――――――――――ッ!!!!!!!)


 

 ――――ようこそ、禁断の世界へっ――――


 扉を開けて飛び込んだところで、クラッカーが鳴り響く。

 次に、多種多彩な仮面を被った下着姿の連中ヘンタイに拍手喝采を浴びるアラモード。


 迷いなど一切なかった。

 アラモードはそこにいる全員を氷系最上級魔法『アナエルーサ』で皆殺しにすると、くるりと背を向けて扉をぶちやぶった。


 

 ――その後三か月間、アラモードは『くぱぁ』の幻影に悩まされた。


 



 ■――四魔将軍『妖艶姫デボネイア』、極度のショックにより再起不能ッ!!





【『くぱぁ』を知らない方は、[同人用語]、及び[技]に関する補足説明をお読みください。女性の方はフォローを外さないよう、お願い申し上げます。作者は変態ではありません(笑】

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