第20話








◇陸奥市内





『はぁ・・はぁ・・はぁ・・』


男が逃げるように路地裏に走り抜けていた。



グサ!


矢が男の足を突き刺す。


『ぐわぁ・・!』



男の胸ぐらを掴み上げると加工された声で話しだした。


【”999(スリーナイン)”の残党だな】


『ああ・・そうだ・・でも、もう何もやってないぞ・・』


【”999”にはJACK以外に幹部がいるのか?】


『・・・いや、”999”はJACKがボスだった・・』


【他に組織があるのか】


『オレたちはそこまではわからない・・ただ・・』


【ただ、なんだ】


『JACKはよくどこかに電話をしていた・・』


【誰だ】


『名前はわからないが・・確か・・”QUEEN(クイーン)”って言ってたような・・』


【”QUEEN”・・・】


宗介は父の残したメモを思い出した・・確かそこにも”QUEEN”と言う文字があった。


『頼むって・・本当に組織が壊滅してからは何もやっていないんだって・・』




宗介は掴んでいた胸ぐらを緩めると男の足に刺さっていた矢を抜いた。


男は何かに慌てるようにその場から逃げていったが、その目線は宗介に対するものではなかった。


宗介は背後に殺気を感じ、素早く振り返ると矢筒に手を掛け、弓を構えた。



『これは、これは 殺人犯のナイトイーグル、今度は警官に矢を向けますか?』


黒いスーツに黒いネクタイを締めた、細く釣り上がった目をした男が語りかけた。


【誰だ!】


『お前が探してる男だよ』


【お前がQUEENか】


宗介は構えた弓矢に力を更に加えた。


『さー、どうぞ、どうぞ』QUEENは両手を広げて宗介の前に立ちはだかった。


周りには制服警官が銃を構えていた。


(なぜ、警官が・・QUEENを・・?)宗介はそこに違和感を感じていたが目の前に両親の死に関係する人物がいることの方に気を取られていた。


路地裏での出来事だったが、警察官が居ることで一般市民がざわつき出していた。



『ナイトイーグル?』



『警官とやりあってるの?』



『マジであいつ悪いやつだったのかよ』



宗介はそれには目が言っていなかった。


今の宗介には、目の前にいるQUEENを倒すことしか見えていなかった。


その時、1台のバイクがもの凄い速度で走り込んできた。


警官たちはとっさに避けたことで道が開けた。


バイクは宗介の前に停まると、素早く反転した。


『乗りなさい!』


宗介は何が起こったか理解するのに時間が掛かっていた。


『いいから乗りなさい! あんたこのままだと本当に犯罪者にされるわよ』


バイクの人物はフルフェイスのヘルメットを被っていたが、黒いボディスーツを来た女性だった。


宗介は言われるがままそのバイクの後ろに跨った。


するとバイクは急発進して警官たちの方へと向かっていった。


警官たちは路地裏から表通りに向きかえると拳銃を構えてバイクを狙っていた。


『よせ』


QUEENが警官たちを制した、一般市民が多く集まった表通りではさすがにまずいと感じていたからだ。


警官たちは一斉に銃を下ろした。



『クソ、邪魔が入った』



QUEENは一言吐き捨てると指を鳴らして一人で歩きだした。





警官たちは一斉に正気に戻ったような感じで”何故、こんな所にいるんだ?”といった

表情でお互いを見合わせていた。







バイクは陸奥市内を駆け抜けていた。



フルフェイスのメルメットを被った女はワイヤレスイヤホンマイクに話しかける。






『こちらブラックカイト、陸奥市内でナイトイーグルと接触に成功』





陸奥市内のホテルの一室でブラックカイトからの報告を受けた佐渡は楓の方に振り向いた。




『さぁ、君の出番だ』

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