下りエスカレーター。
よくもまぁ、次から次へと。
その閃きと行動力を善良な行いには変えられませんこと??
深夜、人気のない駅のホーム。同じ様に人気のないエスカレーター。終電2本前の繁華街からはだいぶ離れた駅でのお話でございます。友人宅の最寄駅であった為、たまに利用しておりましたそこそこ大きな川沿いにあるその駅は土手よりも高い位置にホームがございまして、土手の下にある生活道路までは長い階段とエスカレーターがありました。もちろんエレベーターもありましたが、目的地は逆の方向でしたのでよほど大荷物の時以外は使用いたしませんでした。この、エスカレーター朝は上りなのですが(どのタイミングで切り替わるのか存じ上げませんが)夜は下りとなっておりました。天井があまり高くないものですから、ホーム側からは一番下のステップが見えないのでした。
梅雨の湿っぽい空気の中、ホームに降りたのは私を含め3人でございました。白髪の酔いどれ紳士は私とは反対側の階段へふらふら向かわれました。短髪の若い殿方はベンチに座りどなたかと通話中のようです。
私は急ぎエスカレーターへ、動く階段に慎重に足をのせ地上面に運んでいただくべく前を見据えておりました。
半分ほど下りた所でその事件は起こったのでござます。低い天井の死角から突如現れた半笑いの男性が下りエスカレーターを登って来たのです!!
?????頭に浮かぶ大量のはてなマークと身体に走る悪寒。頭より身体の方が先に危険を察知するのですね。。このお話にお付き合いくださっている皆さまならお気づきかもしれませんが、もちろん下半身こんにちは系輩の登場なのでした。。。
半笑いの変態の狂気
下るわたくし
のぼる変態
近づく2人の距離。。
嗚呼。。
背筋が凍るとはよく言ったものです。とにかくお逃げなさい!!わたくし!!選択肢はただ一つ、下りエスカレーターを駆け上がるしかございません。さすれば、先ほどの若い殿方がいるはずです。いてくださいまし!!
強張る身体を翻し全力で駆け上がるのですが、なかなか前に進みません。振り返る勇気は持ち合わせませんでしたが背後には確実に気配が迫っておりました。
嗚呼、神様。。ほんの10m ほどの距離が永遠に感じられるほどで半泣きになりかけた頃、先ほどの殿方がエスカレーターに乗ってらっしゃったのです。駆け上がる私にギョッとしたようですが、私の背後に迫る狂気に更にギョッとすると同時に全てを察してくださったようでした。そして危険を察知した変態は当然逃走し始めました。
『何しとんねん!!待てや!』
と勇者が私を追い越しエスカレーターを駆け降りてくださいました。
嗚呼、神様。。。
不埒な輩も全力で駆け降り逃げていきます。
もう下りエスカレーターに抗い駆け上がることをしなくて良くなった私はまだ恐怖で強張る身体を屈めて、エスカレーターの先を覗き込みつつ地上面へと運ばれていったのでございます。
エスカレーターを降りた所に勇者が戻ってきてくれました
「大丈夫ですか??改札を飛び越えて逃げていきましたよ。」
なんと優しいお声。ホッとすると涙が溢れてきてしまったのでございますが、強がりな私は当然のように『大丈夫です。ありがとうございます』と答えてしまうのでした。。。
「窓口かそこの交番まで一緒にいきましょうか?」
なんと言う優しさ。惚れてまうやろーーーーー。寧ろ惚れておしまいなさい!!甘え倒しておしまいなさい!!!と、年増となった今の私からのアドバイスとは真反対の返答をし、とても心配してくれる殿方に御礼だけ述べて、人気のない商店街を通り友人宅へと向かったのでした。。
てのや、、変態の光明として素敵紳士に助けられているのに何故ゆえ。。
変態からは全力で逃げても素敵紳士から逃げてはいけません。立ち向かうべき案件なのでございます。
先の見えないエスカレーターにはお気をつけあそばせ お嬢さま。
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