第24話
美砂ちゃんが提案してくれた「知り合いのキューピッドに頼んで奥名先輩に黄金の矢を打ってもらって両想いになる」という話。それはあの日先輩に振られて以来真っ暗だった俺の人生にいきなり現れた“希望の光”だった。
いける! なれる! 奥名先輩と両想いになれる!
しかし次の瞬間、俺は“あること”に気づいてしまったのだ。
「ああっ、でもダメだあ……」
「ど、どうしたんですか、英介さん」
崩れ落ちる俺に驚く美砂ちゃん。
「美砂ちゃん」
「は、はい」
「もし俺がそれを頼んだとして、君はそれを神様に報告するんだろ」
「そ、そうですね。することになりますね」
「自分の私利私欲のために天使を利用したって知られたら、神様はどう思うだろう」
「あっ」
どうやら美砂ちゃんも気づいたらしい。
「神様はこう思うだろう。『たかが人間のくせして天使を利用するなど不届き
「英介さん……」
俺は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
どうしたらいいんだ。
今、俺の前にはふたつの選択肢がある。
1.美砂ちゃんに頼んで(たとえ
2.頼むのは
どっちを選ぶべきか? どう行動すべきなのか?
その瞬間、俺は再び頭を鈍器でぶん殴られたような衝撃を感じた。いや、だからこれまで頭を鈍器でぶん殴られた経験はないから同じかどうかはわかんないんだけど。
「美砂ちゃん!」
「は、はいっ?」
「もしかして君は知ってたのか。これも『神様のテスト』だってことを!」
「えっ?」
美砂ちゃんがビックリしたような顔で俺のほうを見てる。この演技派女優め!
「君はこれが『テスト』だって知ってた。君は知っててさも親切そうに『キューピッドの知り合い』の話を持ち出したんじゃないのか!」
「そ、そんなあ……」
俺は激しく美砂ちゃんを問い詰めた。かわいい顔してまたも俺を
ところがそこで予想外のことが起こった。
美砂ちゃんの目にみるみる涙が
「ひどい……。ひどいです英介さん。私はただ英介さんを元気づけようと思っただけなのに……」
美砂ちゃんの目からぽたぽたと涙がこぼれ落ちる。
「私、これが『テスト』だなんて思いもしなかった。それを英介さんったら、私がさも
うるうるの目で俺を見つめる美砂ちゃんに嘘をついているようすはなかった。
あれ? もしかして俺また間違えた? ひょっとして今回も「孔明の罠」?
テストでもなんでもないのに俺が勝手にテストだと思い込んでしまった? だとしたら俺、とんでもない大馬鹿者じゃん。
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