第14話
「というわけです。以上です」
美砂ちゃんは語り終えた。俺は言葉もなかった。頭の中で“人類滅亡”の4文字が強烈な音とともに無限ループで響き続けていた。彼女が座ったのもしばらく気がつかないほどだった。
でもこれで聞きたいことはひととおり聞いたわけだ。しかしまだなんだかモヤモヤする。
「ところでこの賭け、当事者である俺にも当然なにかメリットがあるんだよな」
とりあえず思いついたことを聞いておこう。後のことは後になってからだ。
「メリットだと?」
「そう。俺は今回世界の人々の命を守る立場になるんだから、それにふさわしい力とか能力なんかが備わったりしてるんだよな。空が飛べたり、ビームが出たりとか。そうだ、どうせなら時間停止の能力なんかがいいな。俺がひと言『ザ・世界』とか叫ぶとまわりの時間が停止して好き勝手できるとか」
それを聞いたふたりはなんだかキョトンとした表情をしてる。おい、どうした。
「そんなものはない」
少しの間の後、おもむろに久梨亜が宣言した。えーっ、マジかよ。
「そんな……」
「『そんな』とか言われてもないものはない。英介の能力は他の人間となんら変わるところはない。ごく普通の一般人だ。いや見たところむしろ平均以下だ」
「平均以下って言うなよ、知ってたけど。それよりなにも特別な能力とかがないんだったら、どうやって地球の平和を守るんだよ」
「誰も英介に『地球の平和を守れ』なんか言ってない」
「じゃあモンスターなんかが現れて『たたかう、にげる、ぼうぎょ』とかの表示が空中に浮かび上がんのか。そして俺の選択次第で世界の命運が決まるのか。あっそうか、超能力なんかじゃなくて“伝説の剣”とかがもらえるんだな」
「モンスターは現れない。選択肢も空中には浮かび上がらない。伝説の剣なんかない」
なんだよ。テンションだだ下がりじゃねえか。
俺があからさまにしょげていると、美砂ちゃんがくわしく説明してくれた。
「なにも特別なことは起こりません。英介さんは明日からもこれまでのように普段通りの生活をしてもらいます。その普段通りの生活のなかで英介さんがとった行動を
小さい体で一生懸命説明してくれる。かわいい。ちょっとからかってみたくなった。
「つまり人類は“きのこ”なのか」
「ふざけないでください。『この
生まれて2週間なのに椎茸は知ってるのか。
「悪い悪い。つまり『良い行動をすればポイントが上がり、悪い行動をすればポイントが下がる』ってことなんだな」
「だと思います」
「なんだよ、『思います』って」
「すみません。判定基準については教えてもらってないんです」
そうなのか。でもそう間違ってもいないだろう。ならそれほど心配することもないんじゃないのか。明日からもこれまでと同じように行動して大丈夫なんじゃないのか。
まあ多少マイナスポイントがついたとしても、俺は人類滅亡を招くようなヘマはしない。
たぶんしないと思う。
しないんじゃ……。
おっとこれ以上はどっかからJA○RACが来ちまう。自主規制しとこ。
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