35話 新しい場所を求めて

一日しっかり休んだ後は、狩りと採取に勤しんだ。

 ワニの日まで六日ある。

 ラビットをしっかり確保しつつ、西の森の探索範囲を広げることにした。


 俺たちってラビット以外にほとんど捕獲できてないんだよな。

 ここらで別の収穫が欲しい。

 本当はハンターサイドと協力したいのだが、

 ワニに向けてかなり忙しいそうなのでやめた。


 足を延ばし山の探索を行った。結構やばいのがいるっぽい。

 マウンテンボアとグリズリーだ。まぁイノシシと熊だな。

 図体は想像より一回りでかい。


 大型の動物類を倒すには武器が必要だよなぁ。銃なんてないし、攻撃魔法もない。

 知りうる最大火力はハンター達が使う弓か。

 ハンター達は弓で打ち抜いて捕獲してるらしいが、かなり大変らしい。まぁそうだろうな。

 てなると罠か。『探知』魔法と罠を合わせればかなり有効なはず。

 この辺も検討材料だな。


 四日間使って山探索したが、大きな収穫は得られなかった。


――――


「他の地域の探索しない?」


 設楽さんからの提案は探索四日目の夜だった。

 停滞してるタイミングに彼女の発言は非常にありがたい。

 同じことを繰り返しても意味がないときは意味がない。

 もちろん、継続こそ力って時もあるけどさ。


「ふ~む」


 先生は考え込んでる。設楽さんが革新派としたら彼は保守派だな。

 俺は……流される役だ。

 三権分立っぽくていいじゃないか。

 意見がないって言われようが、ぶつかり合ってもしょうがないからな。


「たしかに、山の探索に関してはハンター達に相談したほうが効率よさそうですね」

「まぁそうだな。だがどこに行く?」

「設楽さんプランあるの?」

「無いわよ」

「な、無いのかよ」


 なんかあるのかと思っちゃったよ。


「そういうのは赤井さんがやることでしょ」

「え?」

「村の人に、なんかありそうだけど開拓されてないとこ聞けばいいじゃない」

「そ、そうっすね」


 ん~どうしよっかな。

 明日聞き込みして、明後日探索して、その次の日はワニか。

 なんか非効率だな。


「それじゃ、行こうか赤井君」

「へ?」

「さすがにこの時間ならハンター達も時間あるんじゃないか?」

「あぁなるほど」

「それじゃよろしく」


 俺と先生はリーダーの家に向かうことにした。


――――


「コンコン、お疲れ様です、アカイです」

「おぉ~、アカイちゃんか。どした?」

「こんばんは、リーダー。少しご相談が」


 家の中にはフッチーさんを含めた6人がいた。


「作業中でしたか」

「まぁ、ワニ釣りまで3日しかねぇからな、へへへ」

「つ、釣るんですか??」

「おうよ。フッチー見せてやんな」

「ああ、よっこいしょ」


 フッチーさんが持ち上げたのは、先端に石を結びつけてある、綱引き出来そうなぐらいの縄。


「当日は石の周りに肉を縛り付けるんだ」

「へへ、あいつらの噛む力はスゲェからな。

 一度喰いついたら離さねぇ、そこを利用した釣りさ」

「へぇ」

「明後日は村人総出だからな」

「え?そうなんですか?」

「あぁ、村全体の行事だ。それはそうと何か用があったんじゃないのか?」

「そうなんですよ、あ、その前に激励です」


 ホールラビットの燻製をプレゼントした。


「こいつはありがてぇな、一区切りしたら一杯やるか、へへへ。で、なんだよ?」

「いや~、ちょっと探索範囲を広げたいと思ってまして…」


 リーダーとフッチーさんに事情を説明した。


「ふ~ん、面白そうなところねぇ」

「南はいかないほうがいいな」

「へへへ、そうだな」

「なにかあるんですか?」

「ワニがいっぱいだからよ」

「あぁ、南側なんですね」


 村の横を流れる川を下った先にワニが生息しているらしい。

 そしてフッチーさんが新しい場所を提案してくれた。


「南西なんてどうだ」

「南西ですか?」

「ちょっと遠いがあちらは火山地帯だ」

「か、火山?」

「ドゥール火山といって、山二つ越えないといけないけどな。

 ただ、南西に近づくにつれて生態系も変わってくる」

「あ、危なくないですか?」


 リーダーが笑い出した。


「ガハハ、火山まで行けばわからんが、さすがにそこまでは行かないだろ? 二日はかかるぜ」

「なるほど」


 ストライクバードの件で懲りてる。

 彼らの二日は俺の四日だ。


「まぁ、俺も行ったことないから良く知らないんだけどな、ガハハ」

「ありゃ、ちなみに何か役立つ生物とか植物知ってますか」


 リーダーはフッチーさんと見合わせた。


「わかんね~な。狩りするだけなら北側の森で充分だからな」

「あるかもしれんが、無いかもしれん」

「へぇ、行ってみましょうか先生」

「そうだな」

「まぁ、なんかあったら教えてくれよ、へへへ」


 明日は南西だな。


「ま、珍しいならその辺だな。後はもっと遠いなら湖だな。

 そこまで行けば湿原があったりして面白いぜ」

「ドレークに食われかけたくせに」

「う、うっせぇ!」


 なかなか有力な情報を聞けた。

 問題としては、この後軽く飲もうとなってしまったことだな。


――――


 俺は一杯だけ飲んで、ササっと帰った。

 先生? 彼は置いてきた。よほど酒の虜みたいだ。


「てことで火山があるらしいよ」

「は?」

「南西に火山があるらしい、二日ぐらいかかるって、近づくにつれ生態系も変わるらしい」

「なるほど」


 こんな説明でもわかってくれる、相思相愛だ。


「他に情報は?」

「ん~ハンター達も行かない土地らしい」

「情報がないってことね、わかったわ明日行きましょう」

「朝一出発する? 起きれる?」

「――だ、大丈夫よ」


 偉い子や。


 そして先生は帰ってこなかった。

 ダメな大人や。


――――


 太陽が出る前に俺は起きた。

 設楽さんは、無理矢理でもいいから起こすように言われていた。


「火山いくで!」

「――水頂戴」


 無理矢理水を飲んで目を覚ました。

 先生はもちろん帰ってきませんでした。


 先生を迎えに行くのも面倒なので、

 悪いけど二人とピコ一匹で出発した。

 書置きに、「火山方面に行きます、のんべぇ先生へ」と書き残しておいた。


 道はとにかく南西へ。村の周辺は草原って感じだったけど、

 南西に行くにつれ、どっちかというとサバンナっぽい。

 草が短かく非常に歩きやすい。


 そんなことを考えながら、ふと思う。

 ふ、二人きりやんけ~。

 こ、これは親密になるチャンス?


「そ~いえばさ、この前の休みは何してたの?」

「ん?」

「いや~、一日休みにしたじゃない」

「研究」

「へぇ、何の研究?」

「魔法」

「お、進展した?」

「まぁまぁ」


 くそ、会話広がらねぇ。


「な、なにか研究結果でた? まだ見せれるレベルじゃない?」


 ちょっと挑発的に言ってみた!ドキドキ


「む! ちょっと来て」


 一本の木の下まで連れてこられた。


「な、なに?」

「ここに立って」


 木の前に立たされた。


「ここを見てて」


 木の幹の俺の目線の高さを指差した。


「は、はい」


 そのまま設楽さんは五メートル程離れた。

 そして指先に魔力を溜めた…気がする。な、なんだろう。

 そして数秒後。


「うおぉ!」


 目の前が光った。


「ふぅ」

「な、何今の!?」

「『発光』」

「『発光』を飛ばしたの?」

「違う、特定の地点で『発光』させたの」


 俺の頭では理解しきれなかったけど、


 ①魔力を木の前まで飛ばす

 ②①と自分の魔力は繋げたままにする

 ③木の前の魔力を『発光』させる


 ということらしい。

 魔力を完全に肉体から離さなければ、『発光』は可能だということだ。

 無線ではなく、有線ってことか。


「特定の地点で魔法を発動することが可能になれば、応用性はかなり高くなる」


 と言いながら、球体状の『発光』を指先から浮遊させた。

 完全に『デ○ボール』ですやん、フ○ーザ様。


「んじゃぁ、俺の『発火』もいつかファイアになるかもしれないね!」

「ん~」

「あれ?完全否定じゃないの?」

「可能性はある」

「ま、まじで?」

「魔力が五倍あれば」

「無理やん!」


 魔法談義をしながら火山方面に向かった。

 人と仲良くなるには、『共通点』を見つけることらしいが、『異世界人』で『魔法が使える』なんて最高の共通点やん。


 日差しが気持ちいと感じるころ、岩石が点在する場所についた。

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