25話 異世界魔法談義

設楽さんは魔法に関して並々ならぬ熱意がある。

 ふと見ると、魔法陣を観察したり、意味もなく『発光』魔法を使ったりする。

 そんな彼女が魔法について話ができるわけだ。

 むちゃくちゃやる気が上がっている。


 設楽さんは速足でサブさんのところへ向かう。

 速すぎて追いつけないです。

 村長宅前で立ち止まったので、待っててくれるのかと思ったら、


「で、家はどこなの?」 

「え~っと、知らないです」

「っち」


 明らかに舌打ちしたよね? 俺悪くないよね~。

 まぁ、途中で、フッチーさんに場所聞いて向かいましたよ。 



「コンコン、こんにちはアカイでーす」

「あれ? どうしたの、こんにちは」


 サブさんは家でのんびりしていたみたいだ。


「こんにちは、シタラです」

「あぁ、昨日は来なかったお仲間だね。どうもサブです」

「どうも」


 変な沈黙。あ、取り次ぐのは俺の役目ですよね。


「え~っとですね、魔法に関してお話ししたいなぁと思って来たんですけど。

 お時間いかがでしょうか?」

「あぁなるほど。構わないよ、どうぞどうぞ」


 快く招き入れてくれた。


「お邪魔しま~す」

「ユカ! ラティエ! お客さんだよ」


 奥さんが現れた。

 奥さんはこれはすごい美人妻ですなぁ。

 ブロンドの髪に整った容姿。某ハーフモデルが歳を重ねた感じだ。


「いらっしゃい、ユカです」

「あ、アカイです」

「シタラです」


 遅れて奥から、娘……さん?が現れた。


「ラティエです」

「――あ」


 す、すげぇ美人……。

 奥さんよりも表情が柔らかくおっとりした感じだけど、

 むちゃくちゃ整った顔。そしてスタイルがやばい。エロイ。

 確実にアイドルで売れるレベルだ。


 こんな美人と長いこと話したことないので、硬直してしまう俺。

 見かねて設楽さんが話しかけてきた。


「何か固まってるのよ?」


 「固まる」を「溜まる」と聞き間違える。


「た、溜まってない!」 

「は?――」

「え、いや、あはは」

「自己紹介でしょ」


 やっと我に返る俺。


「あ、アカイでふ!」

「はぁ、シタラです」

「ふふ、よろしくお願いします」


 後に聞いた話だが、ラティエさんは十三歳とのことだ。 

 十三歳だと。バカナ!


 俺たちはファミリータイプのテーブルに案内された。


「お茶お持ちしますね~」

「ありがとうございます」


 さて、魔法談義開幕である。


「さてさて、どうしたんだい? カネコさんは二日酔いかな?」

「そうですね、今日は使い物にならないでしょう。

 今日は魔法に関してお話ししたくて。

 といっても、魔法に関しては彼女のほうが詳しいので」

「ふむ」

「まずは、『探知』魔法に関して共有したいと思います。

 ただ、『探知』は魔法陣を利用しています」

「なるほど」


 これは前もって決めていたことだ。

 こちらのカードは『探知』『治癒』『着火』の魔法陣だが、隠し事なく伝えたうえで、情報交換しようと決めていた。


 ここからは設楽さんが話を進めた。


「サブさんは『衝破』と『浮遊』が使えると聞いたんですが」

「そうだね」

「どうやって習得したか教えてもらえますか?」

「王都での授業だが、実際の魔法を見てそれを真似する形式だったね」


 サブさんは左手で『衝破』を発動し、右手に持った丸い飾りを軽く吹き飛ばした。


「たとえば『衝破』だけど、実際先生の実演を見て、同じようにやってみるんだ。

 指に魔力を集めて、飛ばす。

 初めは飛ばし方がわからなかったり、ぶつからずすり抜けたり」

「なるほど」

「イメージが大切らしく、何度も『衝破』を実演してもらった。

 そして何度もトライしているうちに、魔力を飛ばすことが可能になり、魔力が物体にぶつかるようになった。」

「同じように、『探知』を習得することは可能でしょうか」

「『探知』は、何かこう見えたりするのかな?」

「というと?」

「『衝破』だと、魔力を球体にして飛ばしてる。

 だから同じようにやってみようと思えるけど、

 『探知』ってのはそうだな、何か出るのが見えたりするのかな?」


 『探知』魔法を思い出してみる。

 若干手が光る気がするけど、『発光』と大して変わらない気がするなぁ。


「――見えないですね」

「ふ~む、だとすると厳しいかな。

 いや、長いことかければ。う~ん」


 少なくとも簡単ではなさそうだな。


「では、魔法陣に関して何かご存知ですか?」

「魔法陣ってのは、魔力を流し込んで使うあの魔法陣だよね?」

「そうですね」

「魔法陣ってのは、王都に行けば結構あるよ」

「高価だけど、魔法ランプは結構出回ってるし、うちにもあるよ」

「――! 見せてもらえますか」


 木製のランプを持ってきてくれた。


「これだね」

「使ってもらえますか?」

「よっと」


 魔法を流し込むと光りだした。


「決まった時間だけ光るよ、大体十分ぐらいかな」


 設楽さんはランプ内に記入されている魔法陣をじっくり見ている。


「この素材何かしら。通常のインクではないわよね」


 設楽さんは真剣モードになってしまったので、俺も質問してみることにした。


「へぇー、魔法陣ってどうやって書くんですかね?

 複製とか出来たら便利そうですね」

「なるほど、同じ魔法陣を書いてしまえばいいというわけか。

 魔法陣なら魔法インクがあればかけるけど、結構高価だよ」


 隣から殺気が。


「買いましょう、どれぐらいで買えますか?」

「え、あ、ああ」

「いくらですか? ホールラビット何匹必要ですか?」


 サブさんは驚いた様子だが、思い出してくれた。


「魔法インクね、たしか十万円ぐらいしたんじゃないかな」

「あ、そうかサブさん王都で住んでたんですよね。

 じゃぁ、ホールラビット一羽いくらで売れるかわかりますか?」

「ん~、今の相場がわからんなぁ。村長に聞いたほうがいいけど、おそらく五千円ぐらいじゃないか?」


 革の相場なんてわかんないけど、ウサギは小さいからな。

 一羽五千円ならいい値段な気がするな。


「二十羽、いえ二十五羽売れば確実ね」

「ま、まぁ希少だから高いわけで大量に売れば値崩れ起きるよ」

「む……」


 設楽さんは渋~い顔になってしまった。

 しかし、サブさんは本当に話しやすいな。

 的確でわかりやすい。そしてイケメン。

 そりゃあんな美人妻もらえますわ。


「魔法インクの原料は極秘で、異常に高いからね。

 君たち次の王都の買い出しで何を買おうか決めているのかい?」

「いえ、まだですね。というか何を売っているかもわからないんですよ」


 サブさんは一呼吸置く。

 あぁ、こんな感じで間を開ける人物がいたな。ミックだ。 

 彼からは軽薄さを感じたが、サブさんからはしたたかさを感じた。

 「さてさてここからが本題です」と聞こえるような間でだった。


「なるほどね……君たちさ」


「王都行きたくない?」

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