26話 次の獲物

バン!「行きたい!」


 お、おう。この子は直情的だ。

 奥さんも驚いてるよ。


「ははは、そうだろうね」

「次の次ぐらいで、王都行きに同行する方法を考えてました」


 そうだったの? 知らないよ、俺。


「なるほど」

「確か、次の王都は四十日後だと聞いてます、どうすれば同行出来ますか?」

「村長を説得できれば可能だね。

 この村の馬車は一台で六人乗りだ。

 基本的には村長とディーンさんと護衛二人で向かう」

「じゃぁあと二人は乗れる」

「だが、村長は乗せないだろうね」

「なんで」

「乗せる理由がないから……かな」


 確かにあの村長が、意味もなく同行を許してはくれ無さそうだ。


「だったら、乗せる理由を作ればいい」


 この人、相当の策士だな。

 どのタイミングからこういう展開を予想してたんだろう。

 前もって考えてたのかなぁ。

 サブさんのあだ名は『参謀』にしよう。


「ホールラビットの売り上げ」

「それは一つの要素にはなるだろうけど、弱いね」


 う~む、置いて行かれてるぜ俺。

 頭がよく回る二人だなぁ。はぁお茶が美味い。


「もったいぶっちゃったね、

 ちなみに護衛二人はハンター側から出している。

 ハンターサイドから君たちの同行を依頼すれば断りづらいんじゃないかな。」

「おお!」


 なんかいけそうな気がしてきた。


「――で」

「ん?」

「何をすればいいの?」

「ふふ、話が早いね」


 なんか転がされてる感じがあるぜ!

 雰囲気もちょっとミックに似てるし、実はミックが化けてるんじゃ!

 無いか。ミックならもっと薄っぺらい。


「ぶっちゃけ私たちも金が欲しい、いい稼ぎがあれば、先々楽ができる」

「そりゃそうですね」

「今の時期、都合のいいことに、捕獲難易度が異常に高いやつらがいる」

「その協力ね」

「そういうことだ」


 まんまと術中に嵌っていく。


――――


 さて、今回捕獲するSランクモンスターは、

 アルタードラゴンだ!

 姿を自在に変化させる十メートル級のワイズドラゴンの亜種!

 アルティネイトダークブレスを浴びると、体が変形してしまうぞ!


 ――この世界にそんなのいませんけどね。

 ちょっとファンタジーもしたいじゃない。


――――


「さて対象となるのは、二種類。ストライクバードとワニだ」

「へぇ~ワニがいるんですね」


 温暖な気候だけど、ワニがいるってのは意外だな。

 かっこいいから結構ワニ好きなんだよなあ~。


「ワニは人手が欲しいだけなんだ。単なる力勝負になるから」


 サブさんが端正な顔をさらにキリっとさせた。


「本題はストライクバード、崖に住む飛天鳥の一種さ」

「鳥ですか」

「結構凶暴な鳥でね。上空から飛来し固いクチバシで獲物を貫く。

 ホッグぐらいなら貫通することもある」

「怖ぇ」

「まぁ狙いは卵なんだ」

「卵ですか?」

「ああ、孵化前のストライクバードの卵はとんでもなく高価でね。

 一つあれば魔法インク二個買ってお釣りがくる」


 設楽さんも真剣だ。魔法インク、マジで欲しいんだな。


「毎年捕りに行くんだが、年に一つとれればいいほうなんだよ」

「そんなに」

「巣は崖に穴掘ってつくるからね、肉眼じゃ見えない。

 まぁ、群生地の情報だけでもかなり有益な情報なんだよ」

「なるほど、そこで『探知』ね」

「そうなんだ、『探知』魔法があればかなりピンポイントに探せるんじゃないかと期待してる」


 設楽さんは俺を見た。

 サブさんの娘さんは規格外に美人だけど、設楽さんもカワイイ。

 見つめられると照れてちゃうよ。


「やるしかないわね」

「まぁ、当の本人がいませんけど」

「やらせるわ」

「よし、じゃぁミーティングをしよう。

 メンバーに掛け合ってくる。今日の夜でも大丈夫かな?」


 その夜、二日酔い明けの先生を連れてミーティングに参加した。

 事の状況を説明するのがめんどくさかったので、とりあえず『探知』のスペックを説明してもらった。

 『探知』範囲は三十メートルぐらいだと伝えたところ、ギリギリいけるだろうと判断された。


 ガケまでの道中は歩いて一日かかるとのこと。

 往復二日と捕獲期間を三日で併せて五日の旅だ。


 食糧、荷物に関しては基本的にハンターサイドで用意してくれる。

 まぁ、少しぐらい食糧は持っていこう。

 ちなみに設楽さんも参加するとのこと。体力的に大丈夫なんだろうか。

 いや、俺も体力無いけど不安だ。


 リーダーが素人向けにゆっくり行くから大丈夫だと言ってくれた。

 まぁ、どうにかなるだろう。


 出発は三日後。

 最後にリーダーが声をかけてきた。


「おう、明日は村長のところいくぞ」

「え?」

「王都行きたいんだろ? 説明しないとな」


 あれ、設楽さん、金子さん? どうして後ずさりするんですか?


「――赤井さんよろしく!」

「こういうのは赤井君だな」


 薄情モノ……。村長のトラウマ、はやく克服してくれよ。

 難癖つけられると思って準備したほうがいいだろうなぁ。

 ふぅ、胃がきりきりするけど、自分の役割だと思ってしっかりやろう。


 明日は、俺、シマーさん、サブさんで村長のところに行くこととなった。

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