17話 いつもいつでもうまくいくなんて保証はどこにもないけど

「なぜ……」


 『探知』魔法は使っていない。しかし穴の中の情景が手に取るようにわかった。

 ウサギはもっと下にいる。手では届かない。

 おそらく既存の穴と繋がり、かなり深くまで逃げてしまっている。

 まるで迷路のようだ。


 穴から一度手を抜いた。

 左掌を見てみると、魔法陣が起動していた。

 そうか、無我夢中なうちに魔力を籠めていたのか。


 魔法陣に魔力を籠めるってのはそんなに難しいことじゃない。

 「魔法陣に魔力集まれ!」っと思うとすぐに集まる。

 イメージとしては「力む」感じかな。 


 穴の中に腕を突っ込んでた時、力みまくってたからなぁ。

 意図せず魔力が集まっちゃったんだな。


――「ためしに左だけ魔力を籠めると半径三メートルぐらい探知できた。

―― 右手だけだと、何も探知できないな」


 先生は自身の発言を思い出していた。

 そして冷静さを取り戻し、左手には希望が満ち溢れていた。



――――――――――――


「ふぅ」


 罠作りも大変だわ。先生も根詰めてたしなんとか成果にしたいもんだ。

 二つ目の罠に取り掛かって二時間ぐらい。

 そろそろ完成、さすがトラップマスターだ!


「はぁ~手が痛いわ~、設楽ちゃんに癒してもらわな~」

「へぇ、設楽さんにねぇ」

「おわ!? 先生?」

「やあ」


 小高くなった場所から先生が現れた。なんか笑顔を押し殺してる感じだ。


「いや、そういう意味ではなくて、そう、『治癒』魔法を!」

「はは、まあいいさ」


 やっぱり機嫌良いな。右手をなぜか隠しているし。

 こ、これは!


「まさか!?」

「じゃじゃーん、一匹目ゲットだぜ!」

「すげぇ! ピッ、ピ○チューー!」


 テンションあがっちまったぜ、サ○シさんよぉ。

 右手には絶命したウサギがいた。

 笑顔マックスの先生と、死んだウサギのコントラストがすごいぜ。


「わ、罠が上手くいったんですか?」

「もう罠はいらないな」

「え?」

「『探知』だよ」


 説明を聞くとこうだ。

 巣穴内を探知することで、穴の形状とウサギの位置がわかる。

 穴によっては難しい場合もあるが、行き止まりになってる穴や、

 逃げ道を判断できる穴があるそうだ。


「なるほど、じゃぁ一匹目はどうやって」

「それは設楽さんにも説明したいから一旦戻ろう」

「わかりました」


―――


「――穴の中を探知ですか、よく思いつきましたね」

「まぁ、いろいろあってね」

「それでどうやって捕まえたんですか?」


 先生はニヤっとしてから右手を突き出した。


「これで水を入れた」


 手にしているのは麻袋だ。


「あぁ、神様からのプレゼント袋だ。水浸しにしてしまったがね」


 なーるほど、溺れそうになって出てきたウサギを一刺しか。

 結構えぐいぜ。


「本当はバケツ的なものが欲しいんだ。麻袋だと水が漏れるから」

「池の周りでやればいいじゃない」

「そうだね、今日は池の周りでやろうかと思うから、ぜひ手伝ってほしいね」

「じゃぁ今日は三人で頑張ろうか、ね、設楽さん」

「……ふん」


 池の周りでも、ウサギは結構いた。

 先生が『探知』し、俺と設楽さんが水いっぱいにした麻袋を急いで持って行った。

 これがあれだな、至福の雑用ってやつだな。


 慌てて出てくるウサギの耳をバシっと捕まえてナイフで刺す。

 血まみれになる先生。でもなんかかっこいいぜ!

 血抜きの仕方は流石にだれもわからなかったので、なんとなくやった。


 狩り五日目にして四羽ゲット。

 次の日はお隣さんからバケツ二つ借りて効率アップ。

 六日目、十一羽ゲット。

 併せて十五羽ゲットした。


 ホクホク顔で村へ戻る三人だった。

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