3話 死者のオリエンテーション


「ゴホン、あ~赤井君、私も同じような疑問を持ったが、

 神様の言うとおりらしい」


 沈黙を守っていた男性が喋り始めた。


「そ、そうなんですね」

「私は金子太一。

 こんな場所なんで自己紹介が遅れてしまった、ははは」

「よ、宜しくお願いします」


 感じのいい兄さんだ。


「え~っと、神様」

『なんだい?』

「言い出すタイミングがなかったんですけど、自己紹介でもしませんか?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「では……言いだしっぺなんで僕から」


「赤井秀介二十三歳、広告代理店で営業してました。

 具体的にいうとシティーワークの営業ですね」


 シティワークはアルバイト系求人誌だ。


「生まれは奈良ですけど、勤務地は大阪です。

 趣味はフットサルと飲むことです、宜しくお願いします」


 手短に自己紹介を済ませた。

 金子さんが小さく拍手してくれた。ええ人や。


「私は金子太一、二十九歳中学教師だ」


 おぉ、見た目通り教師っぽい!担当は体育だろ。


「化学を担当でバスケ部の顧問をしている」


 予想は外れたが、スポーツが出来てそこそこイケメンか。

 女子生徒にモテそうだ、クソッ!


「以上です」


 男はいいんだよ、男は。彼女のことが知りたい!

 美貌の中に闇が潜んでる彼女のことが!


「設楽 蒼 二十一歳」


 おぉ、歳は近いぞ。


「以上」

「えっ」

「何?」

「いや、プロフィール的な……ほら出身とか特技とか」

「……やだ」


 こ、コミュ症か!


『まぁまぁいいじゃないか。彼女は合理的なんだよ』


 合理的って問題なのか。

 合理的に考えて自己紹介不要ってことなら、ちょいヘコむぜ。


『じゃぁ最後に私だな』

「え、神様するの?」

『む? 私だけ仲間外れとは冷たいじゃないか』

「えっと、そういうわけじゃ」

『私にだって名前はあるんだよ』

「……どうぞ」


神様は立ち上がった。


『ふふふ、我が名はミカエル!』


 なんだ、いきなり神っぽく喋りだして。

 それもミカエルとかありきたりすぎだろ。


『地球の観察と異世界の管理を行う絶対者である!』


 神様の背中が青白く光ってるよ…。

 無駄な能力だなぁ。


『そうそう呼び名はミックでいいぞ』


 軽くウインクして、オーラを引っ込めた。


 金子先生がこちらを見た。


「か、神様をミックとは呼びずらいな」

「そ、そうですね」


 設楽さんは髪の毛をクリクリしながら呟いた。

「観察と管理……ね」


『気にせずミックと呼べばよい。

 神と呼ばれるほど万能ではないしね』


 おどけたポーズをとり、着席した。

 この神様、リアクションがアメリカンなんだよな~。


 恐らく、ミック=神様と考えても問題ないんだろうと結論付けたので、別の疑問をぶつけてみることにした。


「聞いてもいいですか?」

『なんだい?』

「かみさ……」


 どうしてもミックと呼んでほしそうな顔で見るなよ。


「み、ミックが私達に異世界を成長させる理由です」

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