三人揃えば異世界成長促進剤~チート無し・スキル無し・魔法薄味~

森たん

0+1話 おお庶民よ、死んでしまうとは情けない

 ラビットが現れた。緻密に計算された罠まで、あと五メートル程。



 罠のポイントは考えに考え抜いた。

 ラビットの行動パターンを考察し、確実に通過する場所を断定した。

 ……断定したと思いたい。



 異世界だし、そこそこ上手くいくだろうと甘い予想をしていた。

 『大したことない』と念押しされていたが、それでも魔法だろ?

 期待以上の成果を上げてくれると思っていた。



 異世界五日目、食糧確保は困難を極めていた。



――――――――



『――ご機嫌いかが?』

 声の主は黒革の椅子に座り、優しく微笑んでいた。

 絹色の法衣に身をまとった、金髪の美青年だ。


『まぁ、掛けなよ』


 促された先には3人掛けのソファ。

 一番奥に座っているのは女性だ。

 栗毛色の毛髪で可愛らしい顔に見えるが、ひどく不健康に見える。

 目つきが悪く、クマもひどい。二十歳ぐらいか。

 鬼○郎のような髪型で、右目に髪がかかっている。

 訝しげな眼でこちらを見ている。



 真ん中には対照的に健康そうなお兄さん。

 黒髪短髪、姿勢が良い。

 隣の女性が猫背故、背が高く感じる。

 無表情な感じでこちらを見ている。

 いや、どっちかというと不安そうに見える。

 スポーツジャージが良く似合っている。



「――失礼します」

「あ、どうぞ」

 健康兄さんの隣に俺は座った。



 美青年は射抜くような瞳で見つめ、一呼吸おいて話しかけてきた。


『なかなか落ち着いてるね』

「はぁ……」

『二人には結構質問攻めにあったんだけどねぇ』

「えーっと」

『ふふ、状況はわかるかい?』


 顎に手を当てて思い出してみる。

 そうだ…取引先との飲み会帰りだったはずだ。


「ん~……仕事帰りだったはず」

『それで?』

「飲み過ぎで家まで帰って、そのあと……」

『そのあと?』

「なんだったっけな」

『死んだんだよ』

「あぁ……やっぱり」


 悲しむべきなんだろうか、驚くべきなんだろうか。

 すんなり死を受け入れた。


『ふむ、随分落ち着いてるね』

「まぁ、状況が状況ですし。夢か、死後の世界っぽいですし」

『ふーん』

「では、あなたは神様? ……閻魔っぽくはないですね」

『まぁそんなとこだよ』


 暫し沈黙、何を聞くべきなんだろうか。

 俺は神様から目線を逸らした。


『まぁ、私から聞きたいことは二つだ』

「はい」



『赤井秀介。

 君は蘇生を望むか。

 そしてそのために努力する気はあるか』

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