2. 五十猛、理数科に乱入する
石見亀山高校の校舎は北棟、中央棟、南棟、西棟と別れていて、E字形で繋がっている。また、北棟、中央棟、南棟の間をそれぞれ渡り廊下で結んでいる。生徒たちのクラスがあるのは中央棟で、知井宮が所属する三年の理数科は中央棟の最も奥の三階にある。
文化部棟は棟の西側正面にある渡り廊下と繋がっていて、僕は駈けながら次に行くべきはどこかを考えていた。
階段を上がりきると三階のフロアに出た。
壁際で一旦停止する。
ZX300のドライブモードを変更、高速連射モードからオートブラケットモードに切り替える。
ZX300の高速連射は二十枚までで、連射終了後、つまりバッファが満杯になった後にカードのデータ書き込み時間、つまりブラックアウトする。その間、無防備な状態となるので、連射モードは止めて、オートブラケットにした。
オートブラケットは露出を+0-と変えて露出の異なる写真を三枚撮影する。+ならプラス補正された露出で、-ならマイナス補正された露出で合計三枚速写するモードだ。
知井宮はどこへ消えたのか?
部室に行った後で一旦クラスに戻ったのかもしれない。
壁際から理数科のクラスを観察する。特に何もないようだ。
僕の前を一人の生徒が通り過ぎたけれど、物陰に隠れてカメラを構えている僕には目もくれず、そのまま階段を下りていった。
よし、突入するぞ。気合いを入れなおすと、僕はそのまま理数科へと向かった。
ガラリと荒々しく扉を開ける。
そのままズイと足をクラスに踏み入れる。既にクラスには数名の生徒しかいなかった。
「知井宮はどこだ!?」
そう叫ぶと、クラスに居残ってた生徒たちが何事かと視線を向けてきた。中には突然のことで驚いて、きゃっと小さく悲鳴を上げた女子生徒もいる。
「知井宮はどこだッ!?」
もう一度訊きなおす。
すると、ガタリと椅子を後ずらせながら立ち上がった男子生徒が声を上げた。
「何だお前、いきなり飛び込んできて無礼な――」
彼が言い終わらないうちに、写撃で口を塞ぐことにした。
すかさずシャッターボタンを切る。
プラス補正で、詰襟の学ランが――
補正ゼロで下着のワイシャツとシャツが――
マイナス補正でズボンとベルトが散り散りとなって消し飛んだ。
「…………?」
今何が起きたのか、件の男子生徒も理解していない。むしろ周囲の女子生徒たちがよく認識している。白ブリーフ一丁となった男子生徒の姿をみて、きゃ――――っと大声を上げた。
ここにはいない、そのまま僕はクラスを飛び出た。
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