〈カクヨム計劃トリビュート/〉にて掲載された時点の感想です。
かつてアポカリプティック・サウンドなる音楽により、完璧な調和が実現した世界。
すなわち全てが均質で差異の無い世界。
個体が個体である必要は消え失せ、他者がわたしになりえる。
そんな世界でわたしを見出すためには、自我を託すための「何か」が必要なのでしょう。
そして、それは拒絶しようの無い物でなければなりません。
画像として示される文字は不適切です。
瞼を閉ざせば消えるのですから。
味覚や嗅覚、皮膚の感覚もあまり適切ではないのでしょう。
それらは簡単に錯覚され、誤解されてしまいます。
そこで最後に残ったのが音楽なのではないか、そう解釈いたしました。
耳に瞼は無く、カフスから響く音楽は拒否できません。
一度頭に残った音楽は無意識に流れ続け、自我を補強するのでしょう。
何かの主題歌やCMソングが頭の中で止まらなくなるあの感覚です。
そうして人々がどうにか自我を保つ世界。
音楽という記号のみに己を託す危うさに惹かれました。
そして、調和が実現した中でも何かを感じ意志を持ち続けた(と思われる)主人公。
この世界と主人公の行く末をぜひ見届けたいと思います。
更新楽しみにしております。