目指せ歌舞伎町脱出!~アラサー女の転職への道~
にじゅうなんさい
これが日常
歌舞伎町の朝は遅い。
朝9時についてほかに歩いているのは、映画館にむかう人やこれから新宿で働く人、自社をでた営業マン。そんな中を、毎週水曜日だけ欠伸しながら歩いていく。10時から19時までの中番シフトだから。店舗の床をあらかた掃いたら、昨日やりかけのまま帰ってしまった入荷品を出しつつ開店を目指す。
11時、店舗の鍵を開ける。10分、20分、30分…平日の昼前、この町に主婦はいないのだ。歌舞伎町近くの通りに面する某100円均一店に勤める私は、夜に備え、お客様がまばらな店内で、一心不乱に商品を出していく。夕方からが戦争なのだ。それまでに少しでも自らの負担は減らしておかねばならない。
やっと昨日の借金が片付いたころ、ベージュに緑のストライプの柄のポロシャツを着た運送のおじさんがやってくる。せかせかとした足取りでどうやってここまで運んでこれたのか、この荷台にここまで段ボールを詰めるものなのか、ピサの斜塔のような入荷品を3往復して置いていく。汗だくになりながら運んでくれたおじさんにお礼を言いつつ検品を同時にこなしていく。出ていくおじさんの背中に、言いたくない言葉をかける。
「すいません、荷物いっこ足んないです。」
絶望の面持ちでおじさんが振り向く。
「えー…参ったね。もうトラックに荷物ないんだよ。」
はいそうですかお疲れ様でしたと返せないのが辛いところだ。
「じゃあ新宿にある店舗に電話していただけますか?私は○○店から掛けていきますので…。」
「いやーごめんねえ。見つけたらすぐ持ってくるから。」
「よろしくお願いします。」
おじさん、よろしく頼む。足らない荷物、私の担当エリアなんだ…。1時間の残業が決定したところで、レジ応援のベルがなり、速足でバックヤードを出ていく。
「なんで俺の言うことが聞けねえんだよ!!!」
怒鳴る大きな荷物を持ったお客様の手には、今月からお釣りを現金で返せなくなった商品券が20枚は握られている。持っている商品はきっちり20個。
「お客様、申し訳ございません」
ああ、今日も一日が始まった。
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