陰陽士の刃

die介

序 校長先生の挨拶

 西園寺高校新入生の皆さん、入学おめでとう。

 せっかく本校に入学したのですから、ぜひ高校生活を謳歌し、悔いのないものにしてください。

 勉学に励むもよし、部活動に精を出すのもよし、恋愛・友情……青春を楽しむのもいいでしょう。

 大人になって振り返ったときに、この高校の生徒であってよかったと思える日々を過ごしてください。

 何か困ったことがあれば、我々職員が全力でサポートしますので遠慮なく相談してくださいね。


 ………。


 と、ここまでが私からの入学祝いの言葉。

 退屈でしたか? はは、ありきたりすぎましたねぇ。

 すみませんねぇ……校長先生の話は長いのが定番ですから、もうちょっと我慢してください。


 皆さんはこの学校が幽霊高校と呼ばれているのはご存知ですね?

 流石に私の耳にも届いていますよ、まあまあそういうこともあるでしょう……と思っています。


 さて、皆さん。この緑ヶ丘が昔は虹ヶ丘と呼ばれ、もっと大きな町だったことを知っていますね?

 半分が海に沈み、今では緑ヶ丘と呼ばれるこの半分の地域しか残っていませんが……

 昔はもっとたくさん道路も通っていて、山にトンネルもあってとても便利な地域でした。

 はは、まぁ私が若い頃の話ですからね。

 皆さんのおじいさんおばあさんからその時代の話を聞いた人も多いでしょう。


 しかし、過去の栄光は海の中……

 きっとそんな無念の中亡くなった方の魂はまだ彷徨っているのかもしれません。

 この高校はその時代からあるのですから。

 だから、もし幽霊をみても、どうか無闇に怖がらないでくださいね。


 私の大切な人も海に沈んでしまいました。

 私はあの惨劇を目の当たりにした人間です。

 だから、死者の無念もわかるつもりです……


 ………。


 実はあの日から、今年で丁度五十年なのです。


 なんとも感慨深い。

 あの時、私は丁度あなたたちと同じ歳でした。

 皆さんを見ていると、まるであの日に戻ったような気持ちになるのです。


 きっと、きっと、今年は何かが起こる、そんな気がするのですよ。

 ふふ、意味がわからないという顔をされてしまいましたね。

 それだけ、あなた方に希望を見出しているという意味で捉えてください。


 おっとっと、本当に長くなってしまいましたね。では、皆さん楽しい高校生活を。

 あなた方が私の悲願を叶えてくれる、すばらしい生徒であることを願います。

 ……おやおや、これは蛇足でしたかね、くくく。

 期待に胸が躍ってつい……


 では、以上で終わります。

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