新規顧客と新規サービス
帰宅してリザードマンの二人に問題が解決したと思われることを告げた。
「ありがとうございます!」
「われらが部族、ケイタ殿への感謝は忘れませぬ」
「いえいえ。よかたらまた買い物に来てください」
「はい、ありがとうございます!」
彼らはモンスター討伐もこなしてくれ、ダンジョンにやや集中しつつあったギルドの依頼を解消してくれた。その報酬でミネラル水ほか、装備品などを買っていってくれた。ありがたいことだ。
数日後、リザードマンの集団が現れた。卵を背中に背負い子守をしている姿や、地位だな子供たちがふしゅー、ふしゅーと歓声を上げて走り回る。彼らの求めるものは……。
「み・ね・ら・るみかん味をありったけ!」
「ありがとうございます!」
味付きミネラル水にはまったようだ。なんか今まで飲んでた水が泥水のようだって言ってるが実際そうだろう。最初は岩のかけらとか含んで、濁っていたはずだ。それでも彼らにとっては命の水だったはずである。そしてザルが買ってきた水を口にする……彼らは覚醒してしまった。もう元には戻れない。
「さすが店長鬼畜です。でもそこにしびれたり憧れたりはしませんが」
「ナギ、どういう意味だ?」
「えー、こうなるのわかっててみかん味を入れたのかと」
「買って行くときには口に合うといいなーとは思ったぞ?」
「こうやってリザードマンたちの生殺与奪を握るんですねわかります」
気持ちはわからなくもない。生命維持のための食事が娯楽になってしまったのだ。戻れない……よなあ。鱗に水分を与えるための水浴びは継続して行うが、飲み水はキャラバンを出すことを契約した、否、させられた。まあ、定期定期に売り上げが上がるルートができて行商人のおっちゃんも喜んでいたし、彼らの狩猟技術は確かで、その獲物を代わりに買い付けてきてくれる。
素材を売却すると代金化ストックを選ぶことができ、ストックするとその分量と種類によって商品が仕入れられる。
先日のヒュージリザードの皮革と鱗で高級スケイルメイルを作ったところ、リザードマンたちにバカ売れした。なんか保水性が上がるとかなんとか? 保水性は彼らの生命線でもあるため彼らの村の共同財産となり、狩りを指揮する戦士が着ることができるようにしたとか。
ほか、軽くて丈夫なワイバーンレザーアーマーとかも人気だ。レッサードラゴンの骨と腱を利用して作った複合弓はコンパクトなのに飛距離抜群とのうたい文句で、がっつり予約待ちである。タイプミスをした最初のPOPは破壊力バツ牛ンと記載してしまい、ナギが呼吸困難なレベルで爆笑した。とりあえず親のダイヤの結婚指輪のネックレスを指にはめて殴っておいた。俺パンチングマシーンで普通に800とか出すし。
そうそう、ダンジョンもいろいろと不思議だった。しばらく時間が経てばボスが再度出現するらしい。そのことについてもやはり考えたら負けのようだ。
たまに宝箱が出るが、ミミックなんかも普通にいるらしい。ひとくいばことか。
そういえばレッサードラゴンの骨を削りだして作った剣が人気商品だ。リザードとかドラゴンに特効があり、ダメージが倍増するらしい。これはあれか、竜属性ってやつですね?
素材の蓄積システムは、冒険者からは好評だった。いつでも現金化できるし、蓄積した素材を費用を払えば武具にしてもらえる。たとえば、ヒュージリザードの皮と鱗を持ち込む。皮5枚、鱗50枚でスケイルメイルができる。これを素材持ち込みなしで買うと20000ゴールドだが素材を全部持ち込むと加工費用で5000ゴールドである。素材として売却する場合は大体だが合わせて10000ゴールドほど。素材持ち込みの場合、差し引きで5000ゴールド浮く形になる。
そしてこのシステムを活用するための最重要アイテムが、会員カードである。これは支店ができたときに機能として追加された。魔力には固有のパターンがあるらしく、それを利用して個人を識別するとかなんとか。買い物に合わせてポイントが付き、それで支払いもできる。また素材の蓄積もこれで管理できる。素材買取の時に、現金化ポイントを選択でき、ポイントでの買取は査定金額から10%アップ。さらにイベントデーの日は買取査定を10%アップとか特価品は会員様得点で5%OFFとかやった。
また契約した商人にはポイントカードシステムに加入でき、その商人との売買でもポイントが付く。いつぞやのビヤダル商人は真っ先に加入した。彼が会員番号1番である。個人会員と商人会員両方で。
カードの発行にはタブレットより小さなスマート端末で行う。これは承認の会員には貸し出される。供託金として1万ゴールドかかるが、ポイントシステムが広がれば広がるほど、彼らにとっての利益になる。それゆえに、彼らは行商先で会員カードの発行にいそしむ。1枚発行ごとに300ゴールドかかるが、同時に300ポイントがカードにチャージされるため、実質負担0ゴールドである。
カードにはコンビニハヤシのロゴを入れており、また写真を焼き付けることができた。バルドの写真を焼き付けて自分自身のカードにしているが、家族の写真などを入れたいという要望が多く、100ゴールドで対応したところ申し込みが殺到した。バルドの写真を入れてくれは、俺に勝てたらな? と言ったらさーっと帰っていった。根性なしが。
そうこうしているうちに、魔国の王都で支店を出す話が本決まりになっていった。魔王陛下は結婚されたそうである。そのお相手は一般人ゆえに発表されることはないらしいが、屈強の戦士であるという。そういえば、バルドの父上にいろいろと装備品の試用を依頼していた。俺が自重なしでエンチャントしたあの指輪は、どうも魔王陛下に献上させられたとかなんとか。アベルさんの話も伝わっており、愛を伝えるときのプレゼントは指輪、指輪ならコンビニハヤシという評判が広まっているとか。さて、支店を出す準備をしないとなあ。キースさんとビビアンさんともお別れである。ちょっと寂しい。
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