驟雨-しゅうう-
仁坂よみ
ep0:そのまぶしい蛍光灯は―――。
先に言っておこう。
これは私の生存記録であると。
私の生きた証なのであると。
私は、宮田朝は、確かにここで生きたのだと。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
悲しい声が聞こえた。
私に投げかけられる、数多の声。
遠くでぶつけられる心配の声。
起きなくては。
起きなくては。
目を
開けなくては…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
まぶたが重たい。
まるで文鎮を置いてまぶただけで持ち上げるかのように。
ああ、このまま泥に沈むように寝てしまいたい。
しかし、起きなければいけない。目を覚ませ、と
頭で考えている言葉が鐘を打つようにガンガンとうなる。
うるさいな。
私は口の中だけでそうつぶやき目をゆっくりと開けた。
「………、…ぃ」
息が漏れるような、かすれた声が空間に響く。
まるでずっと声を発してないような感覚。
せっかく開けたまぶたが徐々に閉じていくのを感じる。
これはどうしたことか、まったくもってまぶしい。
私がまぶしいと感じているのは電気。蛍光灯。
目を開け、飛び込んできた光に私のやる気はいきなり消沈させられた。
「……、…、ぁ”ー…あ、あ、…あーーー」
目を閉じたまま何度か「あ」を繰り返し、
自分でも発声していると確認できるまで声が出るようになったところで、
再度目を開けてみる。
うん、今度は慣れた。
あれが蛍光灯の形状をしていることも確認できるし、まぶしさはあれど
直視できないほどではない。
私にまともな思考が備わったところでわたしに足りないものがあると気づく。
「………わたしは。」
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