第8話 未来は、すぐ隣に

そして、10年後……。


今日は、朝から雪が降っていた。


私は、キッチンでクリスマスケーキを作っている。真っ白な生クリームでスポンジをデコレーションして、ルビーの滴みたいに真っ赤な苺を並べていく。


独身時代は、お菓子作りなんてしたことがなかった私。お店で買った方が、ずっと美味しいと思ってたから。

 

でも、私が作るケーキが世界で一番美味しいと言ってくれる大切な存在が、今の私にはいる。


「ママぁ、早く食べた~い」


娘たちが、可愛い声で催促してきた。


「もう少しで出来るから、ちょっと待ってね」


そう言うと、娘たちは「はぁ~い」と声を揃えて答える。そんな娘たちを樹が膝に抱っこして、微笑んだ。


何気ない光景に胸が温かくなりながら、私はまたクリスマスケーキのデコレーションを続ける。


すると、キッチンに置いてあったスマホが、メールの着信音を響かせた。私はいったん手を止めて、スマホを確認した。


『未来通知 2040 12 24』


開いた本文に書かれていたのは。


『今、幸せ?』


私は微笑みを浮かべ、未来の私に返信する。


とても幸せ、と……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る