第11話 モンスターズワールド -昇格試験-
見つけた宿屋のベッドに寝転がって天井を見上げながらスキルについて考えてみる。
スキルにレベル設定のないゲームもあったはずだが、そちらのスキルについては習得していないことはなく、きちんと習得できていた。もちろん、レベル設定有りで、だ。
そして似たようなスキルについては統合されているように思う。『火炎球』というスキルが『ファイアボール』に統合されたり、などだ。
「…………」
あー、うん。もういろいろ混ざってよくわからないし、使えるもんは使う。よしそうしよう。
よし、次はステータスだ。何やら桁がすごいことになっているが、実際に雑魚敵と戦闘を繰り返すうちに実感できるようになっている。
普段はそうでもないが、敵を目の前にして頭を戦闘に切り替えると周囲がスローモーションに見えるとでも言えばいいのか。まあそんなわけで接近戦も苦もなくこなせるということはちょっと安心した。
ちょっとお出かけするのに命がけというのはハードルが高いしね。
HPについては0になったら死ぬんだろうか。さすがにゲームみたいに一桁になっても元気に動けるとはいかないだろうが、かといってどれだけ怪我したらどれだけHPが減るのかと試す気もおきない。うん。これは保留だな。
MPはどうかな。スキルが使えなくなるんだろうとは思うが、何かの小説のように尽きたら気絶するとかそういうのがあるのかな。今度自宅で試してみるか。
「よし、考察終わり!」
スキルについてあれこれ考えるのは楽しいけど、ちょっと飽きてきたな。生活基盤は日本の自宅だし、そこまで突き詰めることもないんじゃないかと思う。
あ、そういえば生産系のスキルがないな。錬金術とか細工とか。ゲームだと戦闘主体だから、生産系の職業ってあんまりないものが多いよね。
次はそっち系に行こうかな?
なんてことを考えているうちに眠ってしまったようで、翌朝である。
宿の食堂で朝食を済ませたが、やはり想像通りのクオリティだった。パンは固いし調味料系も種類が少ないのであろう。味が薄いものばっかりだったのは仕方がないか。
日本から塩とか持ってきたら売れるかな? などと考えながら詰め所へ向かう。
「お、揃ったな」
中に入るとギロリスがさっそく声をかけてきた。俺で最後だったのだろうか?
よくみると他にも男が一人いる。
「おお……」
なんか獣耳してるよあの人。グレーの短髪からグレーの毛に覆われた耳が飛び出ている。もっふもふというよりはゴワゴワしてそうな感じがするが、なんにしろケモミミだ。
通りを歩く人の中には獣人などもいたが、こうして目の前にいるとじっくり観察できるな。
皮鎧までグレーなので全身グレーのように見える。腕にも毛が生えているが、足は肌の色が見えている。がっしりとした体格で身長は180センチほどだろうか、自分よりも高い位置にある目線はこちらを鋭く見据えている。
自分を見下ろすと相変わらずのシャツとズボン姿だった。そういえば騎士の試験を受けに来たんだっけ。皮鎧的なものが必要だったかな。剣は別ゲームで手に入れたものがアイテムボックスに入っているが、そういえば出しておくの忘れてたな。
ギロリスは特に気にしていないようだったが、目の前の男の装備になんとなく場違いな装いだったことに今更に気づくがもう遅い。
「よし、んじゃ付いてきてくれ」
それだけ言うと、ギロリスがカウンターの奥へと引っ込んでいくので慌ててついていく。
暗い廊下をまっすぐ進むとすぐに外に出た。庭か何かだろうか。
庭先にはまたもや一人の男が腕を組んで佇んでいた。こちらは茶色い皮鎧を着こみ、腰には剣をさげているくすんだ茶色い髪のガタイのいい男だ。
「今回は二人だぜ。よろしくな」
ギロリスが男に向かって告げる。
男は鷹揚に頷くと、組んでいた腕をほどいて自然体の構えをとる。
「試験官のバグワーヌだ。試験は俺と模擬戦をやってもらうぞ。合格基準は俺の独断と偏見が入るので、まぁ気を抜かないようにな」
不穏なセリフを吐くとニヤリと笑うバグワーヌ。
試験官だからして勝たなくても大丈夫だと思うが……。あ、そうだ、とりあえず鑑定しておくか。
――――――――――――――――――
名前:バグワーヌ
種族:人族
性別:男
年齢:42
職業:剣士 Lv35
騎士 Lv18
Lv:42
HP:2434/2434
MP:254/254
STR:532
VIT:623
AGI:235
INT:65
DEX:124
LUK:32
スキル:
剣【ハードアタックLv5】【ハードブレイクLv3】【シールドバッシュLv4】
騎【ホーリークロスLv2】
特殊スキル:
【身体強化Lv3】【HP上昇補正Lv2】
――――――――――――――――――
ふむ。俺よりレベル高いけどステータスが……、いやこれが普通のステータスだよな。
ゲームを思い出して改めて自分が異常なのだと思いなおす。
次は獣耳さんだな。
――――――――――――――――――
名前:アイロス
種族:犬人族
性別:男
年齢:29
職業:剣士 Lv25
Lv:26
HP:2834/2834
MP:103/103
STR:498
VIT:542
AGI:254
INT:45
DEX:198
LUK:43
スキル:
剣【ハードアタックLv3】【ハードブレイクLv2】【シールドバッシュLv2】
特殊スキル:
【身体強化Lv4】【超嗅覚Lv3】
――――――――――――――――――
アイロスさんか。ほほぅ。犬人族とな。犬だけあって、超嗅覚とか……。
ふーむ。ステータスは試験官のバグワーヌとあんまり変わらない気がするが。これはいい勝負をするのかなあ。それとも経験がモノを言うのだろうか。ここは要チェックだな。
「俺から行きます」
二人を鑑定することに注意を向けていると、いつの間に話が進んだのかアイロスが名乗り出ていた。
「おう、わかった」
これはちょうどいいかもしれない。差は若干あるが、ほぼ互角のステータスでいい勝負をするようであれば、俺の試験は楽勝かもしれない。
じっくりと観戦することにしましょうかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます