第9話 モンスターズワールド -お金-

 さて、実験が終わればあとはレベル上げだな。ごそごそとリュックからサバイバルナイフを取り出す。持ってきてよかった、武器。

 このゲームの初期装備はなしだからね。


 他にもスコップとかライターとかハサミとか持ってきたけど、あんまり使わなさそうだなぁ。気合入れて準備した割に、狩りで他に使えそうなものはなかった。


 よし、行くか!


 そんなこんなで街近辺の平野でモンスターを狩っていく。やはり今回もデフォルメされた可愛げのある見た目ではなく、リアルなやつばっかりだった。

 くそっ、もうちょっとリーチの長い武器にすればよかったか。ステータスのおかげで苦戦はしないが、あんまり近づきたくない姿のモンスターばっかりだ。


 三時間ほど狩りを続けていたけどそろそろいいかな。ちょっと飽きてきたとかではないよ?

 ステータスを確認してみよう。


 ――――――――――――――――――

 名前:サワノイ マコト

 種族:人族

 性別:男

 年齢:31

 職業:マジシャン Lv8

    剣士 Lv5


 Lv:8

 HP:834/842

 MP:913/1032

 STR:76

 VIT:60

 AGI:61

 INT:101

 DEX:56

 LUK:199


 スキル:

 火【フレアアローLv3】【ファイアボールLv1】

 水【ウォーターボールLv2】

 風【ウィンドカッターLv3】【エアハンマーLv1】

 土【アーススパイクLv2】

 剣【ハードアタックLv2】【ハードブレイクLv1】【シールドバッシュLv1】


 特殊スキル:

 【アイテムボックスLv2】

 【身体強化Lv2】

 ――――――――――――――――――


 相変わらずステータスの上がりが半端ねえな。しかもマジシャンのレベルまで上がってるし。一度就いた職業なら関係なく上がるんだな。

 また知らない間にスキルが増えてるな。まあモンスターズワールドのほうは習得するスキルは自分で選べないからゲームシステム通りなんだけども。

 ちなみに剣士になったときに習得済みだったハードアタックは、通常攻撃の威力が上がる単発技だ。見た目で言えば攻撃の瞬間に、武器の周りにオーラが纏わりつく感じだな。

 ちょうどモンスターも現れたことだし、新たにできたスキルでも試してみるか。


「――ファイアボール!」


 拳大ほどの炎の塊が飛んで行ったかと思うと、目の前に迫った小型の狼スモールウルフが爆発四散する。

 爆発の衝撃がこちらにもビリビリと伝わってきて髪をバサバサと揺らす。

 うっわ、ちょっとこれ自分にも影響出そうだな。ゲームだと目の前で広域魔法を撃とうがプレイヤーにまったく影響はなかったけどここではそうもいかない。

 というかモンスターが血肉を撒き散らかさずに消えるシステムでよかった……。


 ちょっぴり安堵しつつ次のスキル、ハードブレイクへと進む。武器に纏わりつくオーラが周囲へ拡散する範囲攻撃だ。といっても前方の狭い範囲だけど、実際に使ってみて範囲を確認することは大事だ。

 いいところに今度はサボテンのモンスターが現れたのでハードブレイクを放つ。五メートルほど離れたところで使ってみたが、どうやら遠すぎたようだ。牽制はできたようだがダメージを与えた様子はない。

 三メートルほどまで近づいたときに放ったときにようやく攻撃が届く。と、思ったらサボテンが衝撃で吹き飛んでそのまま消えた。


「うーん。範囲攻撃は威力が低いはずだけど……、ステータスのせいかな」


 なんとなく腑に落ちないが、威力が出るんであればいいことではないだろうか。

 しばらく射程範囲を確認したが、どうやら三メートルがぎりぎりの範囲のようだった。


「さてと、そろそろ街に戻るかな」


 前回はそのまま自宅に帰ったが、今回は拾った素材を売ろうと思います!

 通貨がどんなものなのかちょっと気になるんだよね。


 特にモンスターに遭遇することもなく、無事に街に戻ってこれた。さて、買取屋はどこだったかな。ゲームを思い出しながら素材買取専門店を探す。お、あったあった。

 街の出入り口の近いところにあるので便利だ。


「買取をお願いしたいのですが」


 カウンターにいる無精ひげを生やしたおっちゃんに声を掛ける。


「おう、そこに置いてくれや」


 カウンターを指して紙とペンを用意するおっちゃん。

 俺は背中からリュックを降ろすと地面に置き、おっちゃんから見えない位置でリュックの中から素材を取り出すふりをしてアイテムボックスから出す。

 スモールウルフからは狼の牙、狼の骨、狼の肉の三種類。サボテンからは針とちょっとだけレアな花。レアと言っても五パーセントくらいの確率で手に入るけど。


「ずいぶん多いな。えーっと……」


 感心しながらおっちゃんは素材を数えながら紙に記入していく。


「よし、全部で24350ルクスだな」


 おおー、一番最初のエリアで五桁とはなかなか稼げたかも。硬貨を受け取ってリュックのポケットに一枚残して全部入れる。ジャラジャラうるさい。あとでアイテムボックスに入れよう。


「ありがとうございます」


「また来てくれよな」


 おっちゃんにお礼をして手に取った硬貨をじっくりと眺めてみる。大きさは五百円玉くらいだろうか? でもそれよりも厚みはありそうだ。

 ゲームの中じゃお金のイラストなんかまったくなかったからちょっと気になってはいたのだ。

 素材は銅かな? 鈍く光ってはいるが金属っぽいことしかわからない。

 中央にはほっそりとした顔立ちで、ストレートヘアの綺麗な女性の顔が描かれており、隅っこには10と文字があった。

 ゲームだと他国でも『ルクス』の通貨単位は変わらないので、この女性はどこかの国のお姫様ということもないと思う。女神様とかそういう偶像崇拝的なものかな?

 ひっくり返してみるとどこか神殿を思わせる建物が描かれていた。


「ふーん。思ったよりしっかり作られてるなあ」


 何気なく10ルクス硬貨をポケットに入れて、買取屋を後にする。

 そろそろ帰るか。

 しばらくいろんなゲームに入ってスキル収集でもするかな。

 そんなことを考えながら、人気ひとけのない場所を探して自宅へ帰るのだった。

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