アオハル・ユース・ミステリー

mikio@暗黒青春ミステリー書く人

11月の物語

Sweet dream in the bitter life.

砂糖菓子のパラソルでは寄り添えない(1)

 薄暗い路地で、彼は、くるくると回っていた。降りしきる雨の中、両手を真横に伸ばして、のびやかに回っていた。


 先ほど生徒会室から持ち出した折りたたみ傘はどこにやったのだろうか? そう思ってから気がついた。彼の右手が閉じたままの傘を握りしめていることに――。


 ひょっとして、勉強疲れでおかしくなってしまったのだろうか。不安が胸をきゅっと締め付ける。けれど、不思議と彼の表情にはストレスからくる暗い陰りはない。むしろ誇らしげな笑みすら浮かべていた。


 しばらくして奇行を止めた彼は、「よし、行くか」とだけ言い残して、五十海ゼミナールという個人塾が入っている小さなビルの中に消えていった。


 後にはと、答えのでない問題だけが、取り残されることになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る