第4話 夏草の線路









踏切を渡る時


いつも線路の先を見てしまう。






うちの田舎は島で

電車なんて無かったので

地続きの本土の線路を見ると

世界が開けてて

遠く

何処にでも行ける気がして

いつもワクワクしてた。





線路に立って目を閉じれば


ずっと先まで見えて



子供ながらに

あの頃ずっと想ってた


俺がいくべき君たちに辿り着くと


信じてた。





汽笛は聞こえないけど


ちゃんと聞こえたよ。








少しずつほどけるあの日の

遠い約束


ポケットに忘れてた石ころを

高く投げてやろう。

赤茶けたレールの向こうへ


夏草に埋もれた線路は

低く陽炎揺らして

七色にさざめく小さな

風をはじくよ。


僕のこと想う時

目を閉じて汽車を走らせて

聞こえない汽笛を聞くから



このまま気付かずに

通り過ぎてしまえなくて。

何処まで歩いても

終わりのない夏の線路。


いつでもまなざしは

まぶし過ぎる空を越えて。

どんなに離れても

遠く君に続く線路。



遊佐未森『夏草の線路』♪


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