チョイス
SAI
第1話 最初の選択
幼き頃の記憶。
田舎に僕は家族旅行に来ていた。
日が暮れて旅館の近くの川辺で食後の散歩をしていた時
一人の女の子が膝を抱えて座っているのが目に入った。
それが僕とあの子の最初の出会い。
「ねぇ……君はどこから来たの……?」
まだ幼い少女は潤んだ瞳で少年にそう語りかけた。
少年はニッコリと笑う
「ん?僕は東京から来たんだ」
しかし少女はムッとした表情になっていた。
「違うよ~どうやってこの場所まで来たのー?ってこと!!」
少年は思わず吹き出してしまった。
「あははっ!ごめんごめん、てっきり出身地を聞かれたのかと思ってね」
「……………」
「僕はあそこにある旅館から歩いてきたんだけど……もしかして迷子なの?」
少年は自ら来た道を指さした。
「うん……」
少女は俯いて小さくコクリと頷いた。
「そっか、なら一緒に君の家族を探してあげるよ」
少女は下を向いたまま告げる。
「でも無理だよ……もう見つかりっこない、地球って広いんだよ?」
また少年は吹き出す。
「はははっ!確かにそうかもだけど君の家族はまだ近くに居ると思うよ?」
不安そうな眼差しを少女は浮かべた。
「どうしてわかるの……?」
少年は自分の胸をぽんっと誇らしげに叩いた。
「凄いだろ?僕にはなんでもわかるんだよ」
「うん、それがホントならお母さん達にまた会えるね!!」
少女は、ぱぁーっとした笑いながら言った。
少年は、にこっと笑って得意げに言う。
「その通りだよ!人生は選択肢の連続だ。さぁ君ならどうする?」
「ん??どういうこと?」
少女は不思議そうな顔をしている。
少年も少し考えるような表情を浮かべる。
「これはよくお父さんが言っていてね、常に悔いの残らない選択をしろ。って事らしいんだー」
「へぇー君のお父さんは面白い人だね」
「そうだね、確かに面白いよ。子供の僕にはお父さんが何を言ってるのか意味はよくわからないしね」
「でもどうしてそれを今私に言ったの?」
「だってさっき家族達がもう見つかりっこないって言ってたでしょ?」
「うん……」
「それはもしかしたら、可能性の話だ。
君から聞きたかった答えはそんな事じゃない。
大切なのは本当の君はどうしたいの?ってことだよ」
「お家に帰りたいよ!!早くお母さんに会いたいよ……!!」
その時の少女の目からはまだ子供な僕でもわかるくらいの強い意思を感じとれた。
「それが君の答えだね」
少年はニッコリと笑って少女に手を差し伸べた。
「よしっ!じゃあ一緒に君のお母さんを早く探しに行こう!」
「うん!!ありがとう!」
少女は少年の手を掴んで歩き出した。
2人は無事に目的を果たしーー
少年と少女は別れを告げた。
その日の出来事は二人にとって忘れる事のできない思い出になり
気づけばその日の出来事を何回も思い返していた。
名前も聞いていなかった二人は二度と会うことはないと思っていたのだがーー
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