君と私の恋愛事情

冴木

素直になれない私


「俺、好きな子できたんだ」


下校中、急に打ち明けられた。

またしても幼馴染のシュウが恋をしたらしい。これで高校通算8回目の恋だ。私たちが高校へ入学したのは約一年前、その一年でこいつは7回も恋に落ちすべて玉砕しているのに懲りないものだ。


「で、今回は誰なの」

「なんか冷たくねぇ!?」


当たり前だ、こんな話を何度も何度も嫌という程聞いている。色々な意味でこちらの身にもなってほしいと思う。


「あたりまえでしょ、何回目よあんたに好きな人ができたの」


シュウが何回人を好きになったなんて聞かなくても知っているのに聞いてしまう。まるでシュウの恋愛事情なんて興味がない、と言わんばかりに。本当はそんなことないのに。


「そんな回数数えてねーよ!そんなことより相談乗ってくれよ〜、確か千尋仲よかったよなユウちゃんと。好きな人とか聞いてくれね?」


なるほどね、今回はユウちゃんか。あの黒上ロングで清楚系のあの娘か!私とは性格真反対のあの娘か!


「仲良いけどやだ。めんどくさいし」


「…ケチ」と吐き捨てたシュウは走って私から距離をとった。


心が痛むが仕方ない。私は絶対にシュウの恋の成功を祈ることはできない。したくない。

一体今回の恋はどれほど続くのだろうか。早く終わってくれ、そう思うことしかできない私は拗ねて先に行ってしまったシュウの背中を追いかけた。


… こっちだって嫌な気分なんだよ、バカ。


これは、惚れっぽい男の子とそんな男の子が好きな女の子の物語

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る