週間新報「ジャパリパークに大手IT企業が本格参入」(2034年5月28日付)
IT最大手三社が集結
オープンしてから早二年。未だにジャパリパークの人気は留まるところを知らない。アクセスが悪いにも関わらず、総来園者は既に700万人を突破し、あまりの人気ぶりにチケットは抽選制になっている。そんな大人気のジャパリパークであるが、最近、いささか奇妙な動きが増えている。動物園であるはずのジャパリパークが、かの西澤財閥傘下の西澤システムズやグーグロ、そしてマイケルソフトと提携することが発表された。これで、IT業界のトップスリーがジャパリパークで手を取り合ったことになる。更に、ジャパリパークは教育、食品、医療、重工業、金融など、各分野における国内外の有力企業や有名大学との提携を次々と発表している。最早ジャパリパークは動物園というより、総合大学、あるいは国家と化している。
提携の裏には一大プロジェクトが
節操なく有名企業との提携を発表しているようにみえるジャパリパークだが、その裏では大プロジェクトが進行中だとまことしやかに語られている。そのプロジェクトとは、絶滅した動物や未確認生命体、いわゆるUMAのフレンズ化と、パークの完全自動化だ。
ジャパリパークは知っての通り、「けものフレンズ」法案の後押しを受けて作られた。ところでそもそも、「けものフレンズ」法案の目的は、自然と触れ合うことが少なくなった現代人に「フレンズ」を通じて、自然の大切さや、動物や環境の多様性を感じてもらうというものだった。その目的からして、既に全滅してしまったり、絶滅にひんしている動物に触れ合ってもらいたいというのが、ジャパリパーク運営部の真意なのだろう。もっとも、UMAのフレンズ化は真意が定かではない。単なる集客目的なのか、それとも遺伝子技術の実験なのかは分からない。
また、ジャパリパークは、潤沢な資金を運用して、自然環境の保存を完全自動で行えるシステムを開発中だと言われている。既にジャパリパークの基本的なインフラは自動化されているが、これからはインフラだけではなく、パークそのものの運営を自動化するつもりらしい。ゆくゆくはフレンズ化する動物の選定もAIに任せるのではないかと一部有識者から指摘されている。
しかし、その昔「ジュラシック・パーク」という映画では、恐竜を現代に蘇らせ、さらに園内を自動機械で埋め尽くした結果、恐竜がパークの人間を襲っていく様を描いていた。登場人物の一人が恐竜を蘇らすことについて、責任者にこう言い放つ。「これは自然界のレイプだ」と。事実、ジャパリパークをジュラシックパークと重ねて見る有識者も多数いる。
ネットの反応―「ノアの箱船」―
更なる成長を続けるジャパリパークに対し、ネット界隈では「ノアの箱舟」説なるものが提唱されている。いつか環境の変動などによって人類が滅亡した後に、人類再建の砦としてジャパリパークは建設されたが、人類による秩序を単に再建したところで遠い未来に同じ末路を辿ることになる。そこで、「けものフレンズ」と人類の共存という新秩序によって、人類滅亡のループから抜け出せる、というのだ。つまり、ジャパリパークは人類滅亡後、我々人類が忘れて久しい人間と自然との調和という秩序を新たに作るための施設ということになる。眉唾でしかないが、最近のジャパリパークの動向を見ていると否定はしづらい。もっとも、サンドスターの登場によって、人類が環境破壊で滅ぶという可能性は低くなった現在、人類滅亡に備える意味は果たしてあるのだろうか、という反論が可能であろう。
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