東亜経済新聞「ジャパリパーク開園」(2032年4月1日付)

世界最大規模の動物園―サンドスター・遺伝子技術の実験場―

 昨日、世界最大規模の動物園「ジャパリパーク」が開園した。オープニングセレモニーでは小澤文三首相(72)が開園の辞を述べたほか、滝川伸一文科相(70)、丸山康夫環境相(62)、米・英・中などの各共同出資国の大使が列席した。「ジャパリパーク」は国と民間との共同出資の第三セクターによって2027年から計画・建設が進められてきた。また、本園の開園によって、2025年に策定された「環境愛護推進運動」特別法案(通称、「けものフレンズ」法案)は山場を超えたことになる。


相次ぐ批判―都内でデモも―

 「けものフレンズ」法案は策定当時から国内外で批判を浴びていた。本法案によって、サンドスターや遺伝子技術の民間使用が一部解禁された。ジャパリパークでは、固定環境の指定が成功したとはいえ、未だに真相が明らかになっていないサンドスターが園内環境保持に用いられ、さらに、動物と人間の遺伝子をサンドスターを媒介に掛け合わせて生まれた「けものフレンズ」が動物の代わりに展示されることになる。

 特に後者は倫理上の問題から大きな批判を浴びている。本来、動物の遺伝子と人間の遺伝子を掛け合わせた生物が生存することは不可能であったが、サンドスターの環境固定能力によって、遺伝子接合時のエラーを極小化することが奇跡的に可能になった。そうして生まれたのが「けものフレンズ」だ。人間と遺伝子組成が比較的近い霊長目類のゴリラとの遺伝子接合が成功したのを皮切りに、既に園内の研究所では数種の動物が「フレンズ化」している。


裏には大国の陰が

 日本政府が根強い反対論を押さえ込んでジャパリパーク建設に乗り出したのには、熾烈な技術競争を制する目的、また、他国からの多大な投資を呼び込む目的があると言われる。宗教的な倫理感が薄い日本は、遺伝子技術に対する抵抗が少なく、更には、サンドスター技術に関しては他国よりも進んでいる。そのため、更なる研究を進めたい日本政府と、技術は欲しいが宗教的な問題で研究を行うことが出来ない他国政府との間で、利害関係が一致した。実際に、米・英などのキリスト教先進国や、環境問題が深刻化している中国から多大な投資がジャパリパークになされた。成文大学金子一也教授(国際関係学)は、「ジャパリパークは、形式的には日本政府と民間との第三セクターによるプロジェクトだが、実質的には多国家による共同プロジェクトだ」と述べている。

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