高坂政孝「環境保護政策上の革命とその展望 ―サンドスターの未来― 」(『国際外交』11巻 木曜社、2025年、52頁以下)
……ところで元来、環境保護政策の主目的は、「持続性の維持」にあった。そうした発想は、「宇宙船地球号」や、ブルントラント報告(1987年)で出された「持続可能な開発」という言葉に現れている。つまり、今までの環境保護政策の問題とは、「限りある資源をどのように持続させるか」、であったのである。
しかし、今日では、そうした問題意識が意味を為さなくなっている。なぜなら、サンドスターの登場によって、資源は「限りあるもの」から「限りないもの」へと変化したからである。確かに、石油や天然ガス、あるいはその他諸々の化石燃料は限界がある。しかし、「環境」に至っては、その限界が存在しなくなった。環境を変化せしめる諸要因はすべてサンドスターによって中和される。環境はあるべき調和を半永久的に維持し得る。……謂わば、サンドスターは「神の見えざる手」の如く振る舞うのである。
……(中略)……
斯くて、国際環境保護政策は革命の時を迎えた。たとえ従来の環境保護政策――工場排水に関する規制や、環境基準値の取り決めなど――を維持する国家が現れたとしても、いつかその規制は産業界の圧力によって消えるだろう。私企業は、コストの一部であった環境保護に対する投資を取りやめるだろう。それが良いことなのか、悪いことなのかはここでは議論を差し控えたい。しかし、確かなのは、革新的な技術は一度発明されてしまえば最後、必ず伝播する、ということである。サンドスターという魅惑的で革新的な技術は好むと好まざるとに関わらず、必ずや導入されることになるだろう。
従って、サンドスターはそう遠くない未来に地球を覆い尽くし、地球環境を偉大な調和の下に置くことになる。斯くて我々は環境に限って言えば、『楽園』を手に入れたのである。これからは地震などを除いた自然災害――急激な気候変動や、異常気象など――は消失するだろう。我々人類は自らの手で『楽園』を作り上げた。『楽園追放』より積み上げられた人類の多年に亘る努力と進化は、ここにおいて遂に神の領域――つまり安定と幸福の永続化――にたどり着いたのである。
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