不思議な気持ち

朝森真理

穏やかな時間

 ふわふわ

 ゆらゆら

 ゆっくりゆっくり飛んでいる

 そうぼくはシャボン玉だから

 いつか消えてなくなって…


「何言ってるの?」

 そんな夢心地から現実へと引き戻される。

「何って…今はぼくはシャボン玉だからふわふわしてるんだよ」

「馬鹿馬鹿しい…」

 そう言ってぼくの頭を少しだけなでる。

 彼女の癖だ。

 5歳年上の幼馴染はいつもそうだ。

 ぼくを子供扱いする。

 そりゃぼくはまだ10歳だから子供に違いないけど、背丈だっていづれは彼女を追い抜くよ。

 そうなった時も、こんな態度でいられるのかな。

 ぼくはそんな事を思いながら電車に揺られている。

 今日は彼女の親が提案してご近所さん達と仲良く出かけているのだ。

 あんまり慣れないけど昔から続いてるから仕方が無いのだという。

 つまらないと思うのにも理由があった。

 5歳年上の彼女とぼく以外子供がいない。

 近所に同学年の子が住んでいなかったのだ。

 5歳も離れていると何を話せばいいのかわからない。

 彼女もそうだろう。

 大人たちもそうだ。

 ぼくたちに何を言えばいいのかと思案して、当たり前の声かけをしてから放置されてる。

 大人たちは仕事の事、家庭の事、他の人の事で話し合っている。

 子供のぼくは話に加わる事はできない。

 だって子供だから。

 まだ大人の会話の内容が理解できない。

 でもまあいいかなと思う。

 電車にゆらゆら揺られながらまたぼくは夢想する。

 だって暇だから。

 これくらいしかする事がないのだもの。


 何も考えないで生きていける世界へ行けたらいいのにって思うけどそうもいかない。

 今はご近所さん達とどこへ行くのかなと。

 親はいつも教えてくれないんだ。

 だから電車に揺られてゆらゆらしてる。

 5歳上の彼女は本を読んでいる。


 静かに時は過ぎて行く。


END

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