21:スケルトンキング
スケルトンキングの発生条件は、ホフルの村というところで、NPCのおじいちゃんと話しておくことである。そこでは、死霊の塔の伝承について語られるのだが、やたら長いので割愛。このモンスターに挑むにあたり、ソロプレイヤーのあたしがしたことはたった二つ。
――レベルを上げて、課金する。
「はあああああっ!」
スケルトンキングは、2メートルほどの少し大きなスケルトンだ。レベルは95。周りに5体のスケルトンナイトを従えているので、まずはこいつらに矢を打ち込む。現在のナオトのレベルは100。経験値獲得率を上げるアイテムを使い、スケルトン系を執拗に追い回してここまで上げた。これで体力と素早さの低さをカバーする。しかし、もう少し上げてもよかったかもしれない。
そして、矢は光属性を持つ祝福の矢だ。けっこうなお値段ではあるが、スケルトンナイトを一撃で倒せるのだから、属性攻撃というのは強力である。
(キングとはいえ、普通の奴と基本は同じだな)
闇属性の攻撃魔法、ダーク・ボールは、当たると体力の四分の一を削られる。しかし、プレイヤーを視認しないと発動しないようなので、死角に入れば問題はない。スケルトン系に絞ってレベル上げをしていたので、パターンは身体で覚えている。
もう一つ厄介なのは、固有スキルであるコツコツダンス。ふざけた名前だが、これを踊られると、長時間身動きが取れない。発動されると、避けるのは不可能なので、絶えず攻撃を浴びせなければならない。
「クロ、突進!」
回復アイテムを使っている間は、クロに攻撃を頼む。大したダメージは与えられないが、スキルを発動させないためならこの程度で充分だ。がぶ飲みしているゴールドポーションは、HP全回復の貴重品。クエストの報酬として手に入ることがあり、町や村では売っていない。リアルマネーを使うアイテムショップには、売っている。
「ギイイイイイ!」
「くっ!」
ふいを突かれ、大きな骨でできたメイスが胸に直撃する。だが、心配無用。防具は全て、刷新してある。これらを揃えるのが最も大変だった、金銭的な意味で。ホームの改装もしたいのだけれど、実用的な物から買っていくのは生活の基本だ。VRゲーム自体、娯楽の代表者であるという指摘は、今はスルーさせて頂く。
「食らえっ!」
アイテムバッグから取り出して投げつけたのは、神のいかずちという宝玉である。これを使うと、ストーリークエストのボス以外のモンスターなら、確実にダウンさせられるという代物だ。無料でプレイしても、手に入らない。ダウン時間はモンスターによって違い、基本的には大型のモンスターほどその時間が長い。スケルトンキングは、それが短い部類だったようだが、三発当てられたので良しとしよう。
「グギイイイイイ!」
「よっ、と」
起き上がった奴は、メイスをぶんぶんと振り回すが、難なく避ける。現実ではなわとびもロクにできないあたしだが、ナオトなら宙返りだってできる。
「ふっ!」
ジャンプしながら、頭部目がけて矢を射る。それがとどめになったようで、ファンファーレが鳴ると共に骨が崩れていく。
「ガアアアアア……」
どこか悲しげな叫び声を上げ、消えていくスケルトンキング。ホフルの村のおじいちゃんが、このモンスターについて色々語っていた気はするが、半分寝ていたので覚えていない。すかさずアイテムバッグをチェックするが、お目当ての滅びの王冠は入っていなかった。ちなみに、これとブーツを交換してくれるのが、話の長いそのおじいちゃんである。
「まあ、こんなものか」
予想していたより、倒すのは楽だった。パーティー戦推奨のモンスターといえども、お金の力を使えば怖くないのだ。スケルトンキングが復活するのは、倒してから一時間後。LLOには、三時間という連続ログイン制限があるので、一度のプレイで二回戦えれば良い方だ。
その日はもう一度、スケルトンキングに挑戦したが、レアアイテムは入手できなかった。まあ、のんびりやるさ。あたしはソロプレイヤーなのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます