20年目の奇跡
@yamabiko458
第1話
塚田美咲は、東京日野市の平山という所に住んでいる32歳の独身女性である。
生まれは同じく日野市の万願寺だった。
両親から独立をして、ひとりで平山に住むようになったのは大学を出て社会人になってからのことである。今回の物語の主人公はこの塚田美咲である。
平成25年12月
美咲は仕事先の会社から帰ると、ポストの郵便物を取り、金魚に餌をやって、その場に寝転んだ。
「ああ~、疲れたなぁ。今日の仕事も残業でやんなっちゃう」ひとりごとである。
美咲は化粧もあまりせず、いつもパンツスタイルのボーイッシュな格好をしていた。
寝転がって、郵便物の中身を見た。美咲はある一通の手紙に目がいった。
差出人は塚田美咲だった。
「あれ?私と同じ名前じゃない」美咲は不思議に思って宛先を見た。宛先も塚田美咲になっていた。
封を開け、手紙を読んだ。
読み始めて、美咲は「あっ!これは」寝ていた美咲は起き上がった。
20年前の私からの手紙だったのである。
良く考えて見れば、確か20年前に郵政省で「20年後の自分に手紙を書こう」というイベントがあり、それに参加して書いた記憶があった。
読んでいくうちに美咲は段々と顔が紅潮していた。それが少ししていくと怒りに変わってきた。
自分の手紙を読んで、自分に怒りを覚えていたのである。
手紙の内容を書いておこう。
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美咲から20年後の美咲へ
20年後の美咲、元気で過ごしていますか?この手紙が届くころには32歳になっていますね。もう結婚は出来ているのでしょうか?子どもはいるのでしょうか?
20年後の美咲は覚えているでしょうか?同級生の木村健一君のこと。
健一君と結婚をしたいと思っています。
もし、今でも独身ならば、健一君と会って下さい。平成25年12月24日、クリスマスイブに見晴らし公園で待っていると健一君には手紙を書きました、もちろん20年後の健一君にね。
がんばれ、20年後の美咲
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美咲は読み終わると同時に、「何てことしてくれたのよ。」自分に怒りました。
美咲は、20年前木村健一に恋をした。
結婚したいとも思っていたが、口には出せず、そのまま小学校を卒業して、中学は別々の学校になってしまい、そのままになった。でも、美咲は健一のことが忘れられなかったのだ。そして郵政省のイベントに参加をして未来の健一君に手紙を書いてしまった。
その後、美咲は「恋」というものの本質を知ってしまったのである。
恋というものは、恐ろしいもの。
何もできなくなり、一日中彼のことを思い、苦しみ、悩み、勉強も仕事も手がつけられない状態になる。高校も、希望した学校には入れなかった。勉強ができなかったのだ。いつしか、美咲は恋をするのは辞めようと、なんとなく思うようになり、その後はスカートや女の子らしい服装は一切しないし、化粧もほとんどしないようにしていた。恋とは程遠いスタイルをして、恋から逃げていたのである。社会人になってからも、アフター5は、何もせず真っ直ぐに帰宅するのだった。
それなのに、20年前の自分はまた「恋」という名の灰を燃え上がらせようとしている。
「確かそんな歌があったわね。消えたように思えた灰の中から炎が燃え上がると言う歌が・・・」とひとりごとを言った。
美咲は手紙を読んで、いったい20年前の私はどうしてこんなことをしたのだろうかと悔やんでいた。
今でも健一君のことは好きだけれど、もうあれから20年も経っている。自分もだいぶ変わってしまったし、健一君だってだいぶ変わってしまっただろう。普通なら結婚をして子どものひとりくらいいても不思議ではなかった。
たぶん健一君も結婚しているのだろうと思っている。
それなのに、どうして今更手紙などを出さなくてはならないのか。12歳という若さゆえの事だとは思うが今更何を言っても結局は自分がやったこと。
では、今後どうしようかという思いが頭の中を駆け巡った。
その日から美咲は仕事もうまくできず、失敗ばかりしていた。
またあの恐ろしい「恋」という病気が出てしまったのだろう。そう美咲は思った。
「だから、恋なんてしたくないのよ。」
恋をして告白しなければずっと苦しい思いをする。告白してしまえば天国か地獄が待っている。天国ならいいが、地獄行きになったら、何年も苦しまなければならない。そんな病気になってしまったのだと美咲は思った。
一度は、消したはずの健一君への恋、でも心の中では消えないで灰の中で20年間くすぶっていただけ。
それを20年前の私が燃え上がらせてしまった。
美咲はこのままでは、何も解決しないと判断をして24日のクリスマスイブには、健一君と会うことにした。
健一君と会うことにした美咲は、仕事の帰りにおしゃれなブティックを訪れた。
もちろん、スカートやおしゃれな服を買いにである。
その服を着て、健一君と会おうと思っているのだ。
化粧品も購入した。
準備は万端だった。
当日の朝、今日は日曜日なので会社は
お休みだった。朝からお風呂に入り、美容室に行き、今はやりの髪型にしてもらった。そのあとエステに通い、出来ることは何でもやることにしたのだ。
美咲には、人生最後、これが最初で最後の大博打なのだ。これが失敗したら、もう後はないし、これからは静かにじっと生きて行こうと考えていた。うまくいけば輝いた人生が待っているに違いない。そう思った。
美咲は、今まで生きてきた人生の中で、やっと気がついた。人生とは博打の連続なのではないかと・・・・
だれでも人生の中で岐路に立たされたことは何度かあるだろう。
その時に、実際の道とは別の道を辿っていたら、どうなっていただろうか?
右か左か?
二つに一つの大博打を人間は人生の中で何度も経験するのだろうと思う。
約束の時間が近づいてきた。
クリスマスイブの見晴らし公園で健一君と会えるのだろうか。
手紙には、もし健一君が結婚などしていたら来て欲しくないと書いておいたのだ。
だから、来なかった場合はあきらめるほかないだろうと考えた。
美咲は30分前に見晴らし公園に着いた。
見晴らし公園から見た日野市の景色はとても奇麗だった。
市役所の辺りが見えた。
ベンチに座り、時間まで待つことにした。
その時だった。後ろから声がした。
美咲は後ろを振り返った。「あっ」
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さて、美咲の恋は成就するのだろうか。
人生最大のチャンスでもあり、どん底に落とされる可能性もある。
大博打に出た美咲
次回をお楽しみに!
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