みぢかのけものフレンズ
秋田川緑
みぢかのけものフレンズ
第1章 ばくはつおちなんてさいてー
第1話 この日見た夢の続きを俺はまだ知らない
――それは、本当に長い夢だった。
知らない土地をバスに乗って探検する夢。
仲間がいて――顔も名前も思い出せないけれど、皆と一緒に、色んなところへ行ったのを覚えている。
壮大な大自然に、見たことの無い遺跡。
困難もあったけれど、俺達は泣いたり笑ったりしながら、助け合ってそれらを乗り越えた。
でも、夢と言うのはいつも唐突で、理不尽な形で終わってしまう。
そして、その夢は仲間達に裏切られると言う、最悪の展開で終わりを告げた。
『な、何をするんだ! いきなり縛ったりして、俺が何をしたって言うんだよ!』
突然、押さえつけられて、ロープでぐるぐる巻き。
身動きの取れなくなった俺を仲間たちは見下して、笑った。
『ねぇ、君さ、動物が嫌いなんだって?』
確かに、俺は動物が嫌いだ。
猛獣は怖いし、可愛い系はその存在に腹が立つ。
いろんな種類が居るけれど、あいつらは――
いや、やめよう。
なんで動物が嫌いか、なんてことを考えている余裕は今の俺には無い。
嫌いだけど……だから何だ?
って、思ってたら、動けないままの俺を仲間達が担ぎ上げた。
『それってとっても悪いことだと思うなー。みんなもそう思うでしょ? だったらおしおきしないとねー』
おしおき?
……意味が分からなかった。
動物が大嫌いと言うだけでお仕置きだなんて、ちょっとやりすぎじゃないか?
『ま、待って! お、俺達、仲間だっただろ? な? こんなことやめよう! また、楽しく、バスに乗って、さ……』
『何か言ってるねー』
仲間達は聞く耳を持たず、縛られたままの俺を穴の上で掲げた。
『どんな動物も、同じ
『ひ、ひぃっ止めて! お願いだから!』
『ダメだよー』
遠慮が無ければ慈悲も無い。
俺は穴の中に無雑作に放り込まれ、体は穴の底に打ち付けられる。
……穴の中は最悪だった。
目の前に『どうぶついっぱい もふもふばくだん』と書かれた、導火線に火が付いた丸い物体。
見るからに爆弾だ。
さらに最悪なのは、周囲から駆け寄ってきた動物の群れ。
犬、猫、鳥に爬虫類。
奴らは俺が泣けば泣くほど集まってきて、すりすり体を擦りつけたり、舐めたり、服の中にもぐりこんだり。
『ぎ、ぎゃー! やめろ! 俺は女の子だぞ! 肌をぺろぺろするな、このけだもの! ひー! スカートの中はダメー!』
穴の外、仲間達の笑い声が遠ざかっていく。
俺を置いて、どこかへ行ってしまう気なのだ。
バスのエンジン音が響き渡る。
『待って! 置いてかないで! 助けてぇぇぇぇぇ!』
叫び声だけがむなしく響き渡った。
そして俺の着ていた服はボロボロ。
全身毛まみれ、ヨダレまみれの酷い状態になって、そして、ついに爆弾の導火線が――
――――――――――
――そうして俺は目を覚ました。
ドクドクと脈打つ心臓。
体中に吹き出ている熱い汗。
俺は今、酷く悲しい気持ちで天井を見ている。
くそっ、なんでだよ。
皆、どうして俺にあんなことを。
楽しい夢だったのに!
仲間だと思っていたのに!
……
でも、どれだけ憤ってもむなしいだけだった。
分かっている。
あれは夢だ。
夢ごときでこんなに悲しくなるなんて、ちょっと疲れているのかもしれない。
――うん。気持ちを切り替えよう。
寝たままの姿勢でスーッと息を吸い込み、フーッと吐き出す。
ただのそれだけだけれど、何とか心は落ち着いた。
しかし、目覚めたばかりだからか、頭がフラフラとしている。
天井が不自然に揺れていて、バタバタとうるさい音が遠くに聞こえていた。
……まだ、眠い。
今の今までずいぶん長く眠っていたみたいなのだけれど、それでも、もっと、ずっと眠っていたいくらい眠かった。
でも、まあ、せっかく目覚めてしまったので、しっかりと目を開けてみる。
が、違和感はすぐにやって来た。
体がぜんぜん動かないのだ。
金縛り?
……ならば、っと勢いをつけて起き上がろうとしてみたけれど、やっぱり動かない。
首は動くみたいなので、ぐぎぎっと動かしたのだけれど、そこで見た自分の状態に、俺は目を疑った。
「な、なんだよ、これ」
――それは、紛れも無く拘束だった。
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