ふたつめ

 十一月にもなると、さすがに深夜の街は冷え込んでいる。もう一枚羽織って来たほうが良かったかもしれないなと、少し後悔をする。

 日付はもう変わっただろうか?時計を持っていないので、知る術は無いが、家を出たのが十一時過ぎほどだったので、今が日付の間くらいではないだろうか。

 俺の歩くわきを、OLっぽい女性が通りすぎる。残業かななどと思う。次は、酒に酔ったおっさん。俺も、このくらいの年になったら、楽しい酒を飲みたい。

 またしばらく歩くと、今度は学生っぽい男。浪人か、現役かどっちなんだろう?そろそろ追い込みなのかなー、なんて半自動的に脳が考えをすすめていくような感覚。よく言えば、思考が深まっていく。悪く言えば、妄想が広がっていく。そんな感じ。

 次の人、また次の人、順にそれぞれに対して感想を持つ。昼間であれば、あまりに多すぎる人の量に酔ってしまいそうになるから、いちいち道行く人に感情を抱いたりしない。しかし、深夜の街は静かで、色々な情報が少なくて、それぞれに、人だけじゃなく、建物や、猫、空気に至るまで、考えを巡らせることが可能だ。

 俺は、夜が好きだ。少し、俺自身も街も優しくなっているような気がするから。

 すれ違う人、それぞれに感想を持ったが、じゃあ俺はどんな風に映ったのだろう。不意にそんなことも考え始めた。

 まだまだ夜は長いらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る