イレギュラーストーリー
淡島かりす
薔薇の聖餐 -1-
赤い天鵞絨、白い蝋燭、金色の燭台。
均一性のなく、それでも出来うる限りの技術を注ぎ込んだガラスの窓の向こうには闇が広がる。
絹のドレスを身にまとい、談笑する女たちの腰は一様に細く、その下にクジラの骨のコルセットがあるのは明らかだった。
中世のサロンを誠実に再現した仮想空間は、心地の良い空気に満たされている。
暫く満足げにそれを眺めていた者は、癖で眉間に右手の人差し指を触ろうとして、しかしそれが出来ないことに気付く。その手は分厚いグローブに覆われ、そして顔も分厚いガラスをはめ込んだヘルメットに覆われていた。
少々前時代的な宇宙服を見にまとったその人間は、サロンの中央に立ち尽くしたまま、淡い思考に浸る。雰囲気を壊すのには十分すぎる宇宙服の出で立ちは、しかし着ている本人からは見えない。息をするたびにヘルメットの中で音が反響するのすら、心地が良い。
周りの淑女は、自分たちの世界に紛れ込んだ異端者を遠巻きに気にしつつも、それぞれの会話を、行動を、プログラムの定めたとおりに行っていた。
すると突然、宇宙服の周りに扉が出現する。
中世の城にあるような立派な装飾の扉が開き、中から、あるいはこの場合外から、黒い服を身にまとった男女が一組現れる。
それを見てヘルメットの奥の顔が歪む。近代的なスーツ姿、実用性を兼ねているのだろう、頑丈そうな靴。どれもこの世界に似つかわしくない。
宇宙服は抗議をしようと口を開いたが、それより先に男の声に遮られた。
「イレギュラーエンカウント。『回収』します」
それが宇宙服が聞いた最後の言葉だった。
room = 134*24,,
World Exp(room) {
where room = city,,
peaple = 2,,
peaple.man = yes,,
man.old = 55,,
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