captur#9

#37

第9地区港埠頭



楓がファントムと戦ったコンテナ倉庫とは別の場所にSCARは身を潜めていた。


向かい側の同じ形をしたコンテナ倉庫の天井に楓はいる。


クラブ”ヘブン”でも使用していたスコープを取り出すとSCARのいるコンテナ倉庫付近の確認をした。


コンテナ倉庫入り口にはSCARの部下と思われる男2人が見張りとして立っている。



『今日も冷え込みそうだな』入り口から右側に立つ門番の1人が話し出す。


『カイロ持ってきてないのか?』もう1人の左側に立つ門番が答える。


『ああ、忘れてきた』


『仕方ないな、オレ余分に持ってきてるから1個やるよ』


男が脇に置いてる自分のカバンからカイロを取り出すためもう1人の男に背を向けてしゃがみ込んだ。


『助かるぜ』と男が前を向いた瞬間右の角から黒い腕が伸び、男の口を抑えた。


『!!』男は声を出すことが出来ず、そのまま右側の角の奥へと引きずり込まれた。


引きずり込まれた男は何の抵抗もできないまま顔面を殴られ気絶した。



『ほらよ、酒おごれよな』


男が体をお越し右側を振り向く。


しかしもう1人の男はいない。


『あれ?どうした?・・・どこいった?』


男は不思議な表情を浮かべながら右側の方へ向かう。


『小便でもしてるのか?』男が右側の角を覗き込んだ。


そして驚愕した。


そこには黒ずくめの男が立っていた。


(クロウ!)そう思った瞬間、左手で口元を抑えられ殴られた。


そのまま気絶し、もう1人の男の横へ寝かされた。



楓はコンテナ倉庫の扉をゆっくり開ける。


中では美木本の後ろ姿が見え、その前にはファントムがいた。


楓はイヤホンを取り出すと耳に嵌めた。


すると遠くにいる美木本とファントムの会話が聞こえてきた。



『逃しただと!大丈夫なのか?』美木本の声だ。


『少しあのカラスを舐めてたな』ファントムは悪びることなく答える。


『計画は予定通りなんだろうな?』


『ああ、心配するな。それはこっちに任せてあんたは何だったっけ?”T-ロック”だったかな?そっちの事だけ考えていろ』


『T-ロックのTはT都のことか?随分単純だな』ファントムの横にいるデスマスクは話に割って入った。


『国に売りつけるモノは単純なネーミングの方がいいんだ』


美木本はつづけて『あのカラスは絶対始末しろよ』とファントムに釘を刺し出口へと向かっていった。


楓は素早く身を潜めると美木本の方を伺った。


美木本は周りを気にしながらレクサスに乗り込んで走り去った。




向かいのコンテナ倉庫の上で月明かりの下、楓は走り去る車の方を見ていた。

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