#34
『今から5年ほど前、SCARが蔓延るまえから第9地区は荒れていた・・・』
さらに三島は続けた。
『我々はその荒れた第9地区を救うために前に一度、第9地区を訪れたんだ。そして・・ある男と出会った・・
師匠である猿渡師は当時の君と同じぐらいの歳だったその男を訓練に参加させた』
楓は何も言わずに聞き入っている。 三島は続ける。
『そうだ、師匠はその男にファイターとして戦い、そして地区の再生をするように託した。男はその教えを受け止め戦うことを決意した。今の君のようにな』
『それが・・のちのファントムなのか・・?』
『そうだ・・』
三島はさらに話し出す。
『彼の本名は知らない。語ろうとしなかったが・・彼が第9地区出身だということは知っていた。彼は訓練を終えると第9地区に蔓延る悪を断つと誓い戦いに挑んでいった』
『一体何があったんだ・・・ファントムに』
『彼は第9地区で戦った・・・だが・・素顔を晒して戦っていた。
そのことにより当時のギャング達は彼ではなく彼の大切なものを襲った・・・』
『・・・・・』
『家族・・・親戚・・・すべてだ・・彼には何もなくなり・・戦う意味すら見失っていった。そして彼自身もギャングに襲われ顔に重度のやけどを追った』
『あのケロイド状のあざはその時出来たものなのか・・』
『すべてを失った彼は・・ダークサイドへと堕ちた・・・』
『猿渡さんがあの時言ってた意味が今わかったよ』
(大切な人を守りたいなら、マスクをしなさい)
『だから我々は再び第9地区へと戻ってきた・・・ファントムを止めるために』
三島はお腹の傷を抑えながら上半身を起こした。
『我々でファントムを止めるはずだった・・・だが、ある日出会ってしまったんだ。
命を顧みず人助けたあなたの姿を・・、師匠は君に希望を見たと話していた』
三島は楓の方を見ると真剣な面持ちで話しだした。
『ファントムを止めてくれ、もうグレート・エスケープは壊滅した・・』
楓は少し黙ってその場に佇んでいたが・・やがて口を開く。
『あんたたちの尻拭いをするつもりはないが・・・・第9地区の悪は断つ』
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