#24

 翌日深夜


 田所は一昨日と同じ場所にいる。


 黒ずくめの男に一方的に調べてほしいと言われた情報を伝えるために・・

【嵐が来そうだな】

 突然背後から機械音の声が聞こえた。

『おい、いきなり話しかけるのはやめてくれ』

 田所は心臓がとなるかと思うほどの驚きの中、黒ずくめの男に言い放った。

【新種と事件の因果関係は】

 黒ずくめの男はお構いなしと言った感じで質問を続けた。

 田所は聞く耳を持たない黒ずくめの男に呆れながらも本題に入った。

『確かに田中の証言と過去に起こった第9地区での事件は関連性があるようだ』

【田中・・?】

『クラブ”へヴン”のマスターの名前だ』

 田所は一息つくとさらに続けた。

『田中が捌いた”ナイトメア”の日にちと5件の殺人事件は見事にリンクしている』

【その”ナイトメア”に凶暴性を覚醒させる何かがあるのか】

『しかも田中は”ナイトメア”を6つ捌いてる』

【6つ?】

『ああ、その1件は未遂に終わっているんだ』

 田所は一呼吸置くと力強く言った。

『その未遂事件は・・鳥飼インダストリーと三木本グループの提携会見で起きた発砲事件だ』

 楓は少し動揺したが田所に悟られる事がないように振る舞った。

『それともう一つ、ナインゲートブリッジでの暴動事件で暴動を起こした第9地区側の人間から薬物反応がでている、これから科捜研で正確に調べるが・・おそらくこれだろう』

田所は少し間を置き話をつづけた。

『実は”ナインゲート・ブリッジ”で第9地区の人々を救いたいと熱く語っていた若い野心家がいてね・・私は当初その考えに賛同できなかった。そしてあの暴動が起こり多くに人に被害が加わり私も大事な部下を失った。そのやりきれない怒りをその若き野心家にぶつけてしまった・・でも、これであの暴動事件は仕組まれたものかもしれないと思うと彼には申し訳ないことした』


【”ナイトメア”をこれ以上捌かせるワケにはいかなくなったな】


『ただ、SCARがその”ナイトメア”をどれほど保持しているかだな・・』

【それは”ファントム”から聞き出せばいい】

『ファントム??』

【SCARのボスはそう呼ばれているらしい】


『あんたは一体何者なんだ?』


 楓は何もその問には答えず、夜の闇へと消えていった。

 1人になった田所は煙草を吹かし一息ついて呟いた。


『俺には正義の味方に見えるがな・・』

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