第3話START!DASH!ZERO!

同日PM1:40 

学園都市グリトニル 第八校舎 昼休み


この学園にはある男子生徒がいた彼の名は清透セイトウ ゼロ 高等部二年で特に生徒会に所属しているわけでもなく、部活にも入っていない『一般生徒』である。もっともそれは『二点を除けば』だが。

一つは右目に札が貼られているいること「中二病かよ(笑)」と思う人は多々いるかもしれないがちゃんと理由はある。彼の兄が「そいつはおまもりだ 何があっても剥がすなよ?」といっていたことが原因だ。

零はそれを信じていた。遠い過去の話だが彼の不注意で札が剥がれた際、剥がれていた時の記憶がなくなり、妙な脱力感に襲われていた時があった。 だがこれは表向きの話 本当は右目に宿る別の人間の魂を封印する為の札で彼の兄、清透 京介が貼ったものだ。まぁその別の人間というのは清透家の長男だったりするのだが。でもすでに零はそれを知っていた。時々そいつは零に話しかけていたのだ。 だが不思議と自らを封印している札に関しては何も言わなかった。 これは後から零が聞く話だが、清透家でとある危険な魔法を作り出した人物がいた。そいつこそが右目に宿る魂の持ち主である。まぁこんなこと言ったらいったで「中二病じゃん(笑)」なんてなるのであくまで『おまもり』として貼っている。(学校側は了承済み)


そしてもう一つの除くべき点は、彼が学校内で1,2を争うイケメンであること。そこにプラスして優しいというラノベ主人公的な立ち位置なので女子からの人気は絶大である。それが原因かいつも背後に数多の視線を感じている。

(今日は40…いや50人か?)

そんなことを考えながら廊下を歩いてると背後の視線が倍近く増えた。

「!?この増えようは!」

「そんなリアクションとらんでいいから」

「おう わりぃ」

零に話しかけた彼の名は暗木アンギ クロ、零の幼馴染である。彼もまた学園でトップクラスのイケメンで、零と同じく女子につけられてる。ただ零のようにかっこいいのではなく可愛い系の男子だ。学園内では良く零と歩いていることから、一部の女子から二人を題材にした腐向けBL冊子が作られている。

「昼ぐらい静かに過ごせないのかねぇ?」

「じゃ 屋上に行きますか さすがのあいつらも俺らにばれたら嫌だろうから そこまで追ってこないだろ」

「そだな」


黒の言うとおり屋上に行ったら誰も来なかった。あの集団の中には零が屋上のドアを開けるまで視線を送る猛者がいたが。

「やっぱ 零って居候ちゃんのこと好きだったりすんのかな?」

口を開いたのは黒だった。黒が居候ちゃんと呼んでいるのは、零と一緒に住んでいる少女のことだ。彼女のことを話すと少々長くなるのでまたべつの話としていつか教えよう。

「すきじゃねーよ 僕が好きなのは大和撫子然やまとなでしこぜんとした姿!同年代!そして僕のことを好きだと思ってない人だ!」

「うーん… あの子は零のこと好きっぽいしなー 他のとこはクリアしてんのにねー」

零が自分のことが好きじゃない女性がタイプなのは女子に好かれすぎていることが原因だ。

(ま、ホントは少々ちがうけど その通りに言ったとこで口では『建前』しか言わないだろうけど)

そんな雑談をしながら昼休みを満喫した。


帰宅時間

零は一人で下校している。黒は部活という名目で少々稼ぎ中だ。登下校は秘密の裏道を通って帰るため尾行する人間は一人としていない。ちなみに、現在日本は東区、北区、南区、西区、そして中央区の五つの地域に分かれており零達の通う学校は中央区にある。と、いうより…中央区そのものが一つの『グリトニル』と呼ばれる学園なのだ。生徒たちがいち早く社会に馴染めるようにとこの地区には教員以外の大人はいない。大型スーパーやコンビニなどといった店もあるのだが経営しているのはすべて学生だ。購買部 -この学校には購買部という部活がある-の部員を店長、もしくは社長として経営 この学園内の会社や店で全国チェーンになっているものもある。

…とまぁ店の話はここまでにしておく。

要するにこの学園は広いのだ そのため学園にはマンション……もとい寮がある。それでも家が東区と中央区の区界くざかいと近いので東区にある家に帰る。

零の代々神主をしていて、零は現神主である。高校二年生で神主をしていることに違和感を感じる人もいると思う。実は彼の血縁者は姉と兄以外誰もいない。その二人は神主の仕事が嫌でそれぞれ海外と国内を旅しているため一緒にはいない。そして両親を含む他の血縁者はある儀式によって命を落としている。

神成かみなりの儀式』…その名の通り神に昇格される儀式である。零は六歳の時にとある理由からこの儀式を受け空間を司つかさどる神の力を手に入れた。しかし常人が儀式をうけるには大量の命を必要とする。そのため清透家の血を持つものを集めて儀式を行い命を落とした。このとき零の姉と兄は母親が家の中に隠していたため、命を落とさなかった。零には以外にも壮絶な過去を持っていたのだ。


さて東区にさしかかる頃、事件が起こる。

「今日も大変だったなぁ~」

なんてつぶやきながら歩いていると目の前の何かにぶつかった。

「あ…すみませ…ん!?」

人にぶつかったと思って謝ろうとして気づく

「か…がみか?コレ… なんか浮いてるし…」

そう、零の目の前にあったのは人ではなく鏡だった。

「なぁ、知ってるか?」

背後から男の声が聞こえた。とっさに振り向いたがそこには誰もいなく代わりに鏡が置かれていた。 

零を挟んで鏡があるため合わせ鏡の状態になっている。

「合わせ鏡の十三番目の顔は自分が死んだときの顔だって」

「誰だ!姿を現せ!」

すると別のところに現れた鏡の中から男が現れた。男は姿を現すと口角をゆっくりと上げた。

男の眼は朱く…

例えるなら秋の夕日のように朱く光っていた。零はソレを確認すると男に聞いた。

「その力はいったい何だ?」

「この力か?これはな半年前の毒薬テロで妻と子を失った時に使えるようになったものだ」

毒薬テロ…一年前に起きた有名なテロだ。大型スーパー内で起きた毒ガスによるテロ。死者は一万人にのぼり生存者はナシ。

「始めは驚いたよ。鏡を作り出したり鏡の中に入り込んだりしてね…でもこの力で殺人を犯した時に気づいたんだ。きっと神が妻と子を殺した愚かな人間を裁けるようにとこの力を授けてくださったと!!」

男は言い終わると高笑いを上げた。

そしてすぐに冷淡にこう言った。

「お前も死ぬんだ」

そう男がい放つと鏡から強い光と熱が発せられる。 その光は直視できないほど。

「私の鏡は日光を取り込み放出させ、その光で人間を焼死させる!

言ったところでお前はもう炭にでもなっているだろうがな!」

男は再び高笑いを上げた…のだったが。

「…がう…」

「ハハ八…は?」

「〝違う"と言っているんだ!!その力の本当の存在理由が!!」

そこには焼かれたと思われていた零の姿があった。

「『なんで傷付いて無いんだ?』なんて思ってたりするか?清透家の血族は符ふだを使った不思議な術を使えるんだ。こいつは護符 いろいろなものから僕を守ってくれる。使い捨てだけどね」

「そ…そんな物がっ!!ならその符が尽きるまで攻撃してやる!」

男は自らの能力で作り出した鏡の破片を零に飛ばした。男の飛ばした鏡の数は優に百を超える。これだけ飛ばせばさすがに符も尽きる。しかし零は立っていた。それどころか傷が全くついていない。

零の隠されていないほうの眼が藍色にほのかに光っていた。

「その眼は…」

「僕はあんたと違って常に眼がこの色だからさ、カラコンを使う必要があったんだけどあなたが似たような力を持っていてよかった。カラコン邪魔なもの使う必要ないし。

そうだ。そっちが手の内を見せてくれたから、僕の力もお教えしよう。僕の力は『物理的な攻撃を一切受けない』って力だ。」

「クソッ!ならば、焼き尽くすまで!」

男は再び鏡を使い零を閉じ込めようとするがそれより早く符を投げつける。

「その前に決着をつけさせてもらうよ。『爆符』!」

零がそう叫ぶと符が爆発を起こす。男は零が符を投げてくるのを見てとっさに避けたようで、左手の甲に少しやけどを負ったぐらいだったが、あの爆発は危険だと思ったらしく

「…ッチ」

と舌打ちをして消えた。

「あ!待て!」

そう言って追おうとしたが、どこへ行けばいいのか少し考える。奴はこの町内で犯行を繰り返し、鏡の中を自由に移動できる。もし鏡と鏡を行き来するのではなく鏡の中にもう一つの世界-鏡写しの世界-があるのではないかと考え、短い時間で行けるところをしらみつぶしに捜した。そして十数分後、ついに見つける。

「見つけたぞ!鏡野郎!」

と、叫んだ瞬間。そこにもう一人いることに気づく。男は技を発動させ鏡の箱に人を閉じ込め人を焼き始めていた。

「…くっ来やがったかクソガキが…だがもう遅い。この技は私が死んだところでこの技は解けたりしない。対象を最適な温度で焼き尽くす。無論この鏡は私以外には壊せないがね」

(くそっ…助けられなかった…)

そう自分の鈍間のろまさを呪いつつ男を睨む。

(これ以上被害者を出さないようにこいつをどうにかしないと)

と、零は考えていた。…のだが、その心配は鏡の中から聞こえた声によって消される。

「ほう?じゃなんだ?壊せない鏡壊したら賞金でも貰えんのか?」

鏡の中の声がそう言い終わると鏡の箱にヒビが入り、やがて崩れる。

「おいおい…簡単に壊せるぜ?ま、少々頑丈のようではあるみてぇだが脆い脆い…こんなんいくらでも壊してやれるぜ?…ってあれ?零君?」

零は鏡のの中にいた人物を知っていた。少し高めの伸長、細身の体についている筋肉…所謂細マッチョと呼ばれる体、そして戦う時に見せる余裕の表情。

「み…緑さん…?何故ここに?」

「え、あぁ…俺は帰る途中でこいつに襲われて…零君は?」

「まぁ同じようなとこですね」

深山緑、彼は零の通うアルバイト先の先輩で、零の知る中で最も強い人物だ。

「な…何なんだ貴様は!!何故私の鏡を壊すことができるんだ!!」

「質問は一個にしてくれよ…何者かって言われたら、まぁしいて言うならカミサマだね」

緑はそう言うと右の手の甲を男に見せる。

手の甲には星同士が衝突しているような紋章が描かれえていた。紋章が光り出し、そこを中心に紫色の結晶が侵食するように腕を覆う。結晶は肩まで進みやがて止まる。右手の甲の光は依然消えない。

この光景を見た男は

「貴様も力を授かったのか!?っく…!だが裁きを下すのは私だけで十分だ!貴様らは消えろ!!」

そう言い鏡の破片を飛ばす。だが

「授かる?裁く?何言ってんだ?」

一つたりともあたることはなかった。その破片は全て破壊されていたからだ。文字通り粉々に。

「お前の使う力には神は関わってないぜ?」

「い…今お前…何をした…」

「見てわかんなかったのか?その鏡を破壊こわしたんだよ。俺はそういう神様なんだ」

深山緑…破壊神 過去に彼の経験した『とてもじゃないがあり得ない』事、それは神成の儀式である。この儀式を経て緑は破壊神の力を手に入れた。

「それじゃあ、お仕置きと行こうじゃないか」

緑はそう言うと右手を握りしめ

「崩破拳 二の型 高嶺の雪崩」

と呟き、男との距離を一気に詰め高速で乱打する。この技は雪崩のように相手に攻撃を与えるだけの技である。が緑は人を殺すことではなくあくまで『再起不能』をモットーに崩破を喰らわせるためこの乱舞のすべてが

当然この技を喰らった男は

「………」

再起不能に陥ったのである。

「あ…ありがとうございます。緑さん」

「いやいや。友人が困ってたら助けるもんだからね」

じゃあなと言って緑が姿を消し自分も帰ろうとしたその時、

「ハァ…ハァ…やっと…追いついた」

息を切らした様子の少年から声がかかった。

「誰だよ…お前…」

「俺か?俺は橘晴斗。反旗団団長の晴斗だ!」

少年は胸を張ってそう答えた。

「で?その団長さんとやらが僕に何の用で?」

当然の疑問を晴斗にぶつける。

「その力」

「!?」

「お前の革命症の力がほしい」

「革命…症?」

「俺ならその力の助けになるぜ?」

(何だこいつ…怪しすぎる)

と思っていると

「怪しすぎる…ってちょっと酷過ぎない?」

と返された。心のセリフに対して だ。

「なんで…」

と呟くが少年はソレを無視して話を進める。

「革命症は何かと不便なことが多いだろう?それに君が患者だってことは俺と同じで自分の周りで過去に殺人が起きてる…それも最愛の人だったり複数の人間だったり」

少年は一拍おいて言った。

「お前お他にも患者はいる。俺は革命症患者のケアをしようと思ってるんだ。でも一人じゃ無理がある。そこで同じ患者であるお前にも手伝ってもらいたい」

「いきなり言われたって…」

「大丈夫だって。簡単にできるさ。意志が固まったら明日もここで待ってる」


翌日 

零の意志はまだ固まってなかった。

(初対面の奴なんか簡単に信じられないけどもしあれが本当なら…)

「本当なら力になりたいけど…」

「何の力だ?」

零のつぶやきを拾ったのは黒だった。零は昨日のことを伝えると黒は考えるそぶりも見せずにこう言った。

「やればいいんじゃなの?」

「は?」

「だって面白そうじゃん」

そのセリフに零はあきれながら言う

「必ずしも革命症患者?が正常とは限んないんだよ?昨日僕が戦ったみたいに力におぼれる奴だって…」

「だったらそいつを止めればいい」

「!」

「その団長さんだって革命症が悪用されることは重々承知だと思うぜ?」

確かに、と零は思う。革命症と呼ばれるそれは凶悪なものも多い。その一例として零が戦った鏡の男である。革命症患者を助けると言うからにはそれなりの覚悟が必要だ。

「それもそうだな。あの晴斗ってやつも心配だし」

「そうと決まったら行こうじゃないか!…俺も連れて行けよ?」

「え…えぇー」


夕方

昨日の約束通り男と戦ったあの場所に橘晴斗はいた。

「意志は固まったかな?…てかその後ろの奴は誰だよ」

「それについては後程…。昨日の話だが僕はお前についていこうと思う」

「ヤッタ!」

「二つほど条件があるけどな」

その言葉に晴斗は

「過酷な条件じゃなければいいぞ」

という

「過酷じゃない…はずだ。まず一つはこいつも入団させてほしい」

そう言って零は黒を指さす。

「別に気にしないよ?人は多いほうがいい。もう一つは?」

「革命症患者…だっけ?もし患者が革命症を悪しきことに使ったら再起不能にしていいか?」

その言葉に対して晴斗はこういった

「革命症がなんで革命の病と呼ばれてるか分かるか?それはたった一人で革命を起こせるほどに強いからだ。俺の『コネクト』だってかなり恐ろしい能力だ。使い方次第で国すら転覆できる」

晴斗は空を見上げ続けた

「だから患者を正さなきゃいけない。それも患者に対してのケアの一つだ。そして俺には力がある。革命症ではない別の力が」

「…革命症にずいぶん詳しいな。お前何者?」

黒が聞くと晴斗はこう返した。

「半年前の薬物テロの行方不明者さ」

再び零と黒い視線を戻し話をする。

「お前らには俺の復讐の手伝いをしてもらう。これはついで程度に考えてもらって構わない」

「復讐…」

「俺はあの時親友を失った…。正確には昏睡状態でいまだ目を覚ましていない。起きるかどうかも五分五分らしい」

「じゃあお前は僕たちにテロの犯人を倒すのと手伝ってほしい、と」

晴斗は頭を下げて

「頼む!難しいことを押し付ける様で申し訳ないが…どうしても…どうしても力が必要なんだ」

その言葉には強い意志がこもっていた。

「分かった。ひとまず顔を上げろよ。僕たちに何ができるかよくわからないけど、お前の…いや団長の手伝いに尽力しようじゃないか」

な、黒と言って零は黒に顔を向ける。

「いきなり掛けんなよ…ハァ…俺は患者じゃないけど団長のやりたいことに付き合おうじゃないか。俺たちは一つの団チームなんだし」

晴斗は顔を上げ

「ありがとう…な」

と呟く。

こうして二人は反旗団なる団体の最初に二人となる。これをきっかけに反旗団は大きくなり世界を救うに至るのだがそれはまた別のお話。


「ってか、黒って患者じゃないんだな」

「団長!?今更かよ!?」

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