2話 商人と冒険者だったら冒険者の方が稼げるんでしょ

 町に向かう間、何回かウサギに襲われる。ここらにはウサギが多く生息しているようだが、全て俺に対して襲い掛かってくる。襲い掛かってくる度に銃で射殺しているのだが…。そろそろ弾切れになる可能性が高いので新しくマガジンを召喚して弾を補充する。


 町まではまだ距離は有る。俺は周りを警戒しながら歩き始め、辺りが暗くなり始めてからようやく町の城壁に到着するのだった。町に到着するまでにウサギを合計10匹仕留めるという大変苦労する思いをしたのは言うまでもない。


 町の入口に到着すると、町の兵士と思われる人が立っており、何やら入りにくい状態。あの子は言葉が分かるようにしてくれているというが、本当に分かるのかは別の話。だってまだ一度も人と話していないもん。


 「こ、こんにちは…」


 「うむ…。ブルクスの町へようこそ!通行書拝見できるかな?」


 「つ、通行書?」


 言葉は分かるのだが、いきなり言われた言葉が通行書…もちろん持っている訳がないし、ここの通貨も持っているわけでもない。


 「町に入るには通行書が必要になる。若しくはギルドに所属している者…所属しているならギルドパスを見せてくれるか?」


 「あ、あの…」


 「ん?どうした?」


 「り、両方持ってないんですが…」


 「そうか…ならガルボを支払ってもらうしかないな」


 「が、ガルボ?」


 「そうだ。通行料として10ガルボ支払ってもらわなければならない」


 ガルボというのが通貨らしい。だが、そのガルボすら俺は持っていないのだが…。


 「が、ガルボが…ガルボがない場合どうすれば…」


 「なんだ…ガルボを持ってないのか…じゃあ、こっち来て借用書書くんだ。今日から3日以内に5ガルボを支払わなければお前は奴隷として捕まる」


 「う、ウサギだったら持っているんですが…」


 「ウサギを持っているのか。だったそれをギルドに売ってくればすぐにここのガルボを支払う事ができる。借用書を書いたら直ぐに換金してくると良い」


 「ぎ、ギルド?」


 「あぁギルドだ。ここを真っ直ぐいった所にある。看板があるから分かるはずだ」


 多分ギルドとはゲームとかに有るあのギルドだろう。そこでこのウサギ共が換金できるとあれば、すぐにでも換金してここのお金を払わないと紙に書いてある通り本当に奴隷として捕まってしまう。


 俺は言われた通り借用書にサインをして中に通してもらい、急いでギルドを目指すことにした。夕方ともあり、人の数が多い。多分買い物客だろう。露店には色んな物が売っており空腹の俺の腹を刺激する。


 暫く歩いていると兵士が言う様にギルドハウスと書かれた看板が見えてくる。結構大きい建物で俺は立ち止まって見上げてしまう。


 「おっと、こんなところでボケっとしている暇はなかった…早く中に入って換金しないと!」


 奴隷になるのは嫌だから急いで中へ入って行くと中は酒場のようになっており、人がかなりいる。俺は周りを見渡してどんな人がいるのかを確認すると、女性や男性がいるが男は筋肉ムキムキのマッチョさん達が沢山いる。そして剣や盾、メイスのようなものが置いてある。


 受付にも沢山人がいるのだが1番大人しそうな女性に声をかけることにした。だってみんな怖そうなんですもん。


 「いらっしゃいませ。ご用件なんでしょうか…」


 「う、ウサギを1匹売りたいんですが…」


 「ありがとうございます。では拝見させて頂いても宜しいでしょうか」


 言われた通り俺はウサギ1匹出すと、女性は平然とした顔でウサギを見ている。ウサギの死骸を見ても全く動揺する気配はない。この世界の人はこの程度の事では動揺することは無いんだな。


 「ギルドパスを見せていただいても宜しいでしょうか?」


 「え?」


 「ギルドパスです」


 「え、あ、ぎ、ギルド…パスは持ってないんですよ…」


 「左様でございますか。パスはお作りになりますか?」


 「で、出来たら…」


 「作るのに50ガルボになります」


 「も、持ってないんですが…ガルボ」


 「さ、左様でございますか…。それでは本来このウサギは15ガルボで買い取らせて頂きますが、パスが無いので10ガルボで買い取りになってしまいますが宜しいでしょうか?」


 「だ、だったら5匹売りますからパスを作らせてくれませんか!」


 「かしこまりました。それでは残り4匹のウサギをお願い致します。今、担当を連れてまいりますので暫くお待ちいただけますか?」


 「え?お、お姉さんが…担当してくれるんじゃないの?」


 「私は買い取りまでが仕事になりますので…暫くお待ちください」


 ニコリと笑ってお姉さんは奥へと引っ込んでしまう。俺は言われた通り、残りのウサギを出して待っていると、モヒカン親父と先ほどのお姉さんがやってくる。


 「よう、お前がギルドに入会したいという奴か?」


 「え、えっと…そ、そうです…」


 「俺の名前はダレルだ。副ギルド長をしている」


 「す、鈴木…太一…です」


 「すずきたいち?珍しい名前だな…どこからやって来た」


 「に、日本の○×という場所ですが…」


 「にほん?どこだそこは…まぁいい。タイチか…成程。で、お前は何で冒険者に成ろうとしてんだ?」


 「ぼ、冒険者?」


 「何だ、お前はギルドパスを造りに来たんじゃないのかよ?」


 「だ、だってギルドパスがないと入口でお金取られるしウサギも値切られちゃうじゃないですか!」


 「そ、そういう事か…じゃあお前は何をするつもりなんだ…」


 「な、何を?」


 「これからどうやって生活をするのかって事だよ。商人をやるのか?それとも冒険者をやるのか?どうするんだ?」


 「ど、どうするのか…」


 確かにそこまでは考えてなかった。先ずは奴隷にならない為に支払いをしないといけないという事だけが頭の中に有り、それ以上の事は考えていなかったのだ。


 「商人はコツコツお金を貯める事ができるが時間がかかる。確かに安定した収入は手に入るがな。冒険者は危険を伴うがお金をすぐに稼ぐ事ができる。それも大金を稼ぎにはもってこいだ。どうするかはお前が決めろよ」


 俺の能力を考えると、商人には向いていない。しかも銃があれば簡単に動物を仕留めることもできるし稼ぐこともできる…ここは冒険者1択になるだろう…。


 「ぼ、冒険者…冒険者になります…」


 「そうか、分かった。じゃあ…幾つかの説明をさせてもらう」


 ダレルさんが冒険者の規則について説明をしてくれる。町の中では冒険者同士の争いは禁止とかそういった常識的範囲の話だ。


 「この話に納得ができたらここにサインをしてくれるか」


 ダレルさんは契約書のようなものを出し、俺はそれに目を通すと、なるべく守る様にと書かれているものであった。


 「あ、あの…この契約書…かなり曖昧なんですけど…」


 「当たり前だろ…誰がこんな契約を守れると言うんだ。こんなのは半分守れたら凄いもんさ。聖人君子くらいだろ」


 「そ、そうッスか…」


 ダレルさんの言葉でだいぶ楽になり、俺は契約書にサインをした。


 「これで契約は完了だ。いまギルドパスを発行するから待ってな」


 そう言ってダレルさんは何処かへ行ってしまい、ウサギの買い取りをしてくれた女性は俺に50ガルボを渡す。


 そして、ダレルさんが戻ってきて、俺の名前が書かれたギルドパスを見せる。


 「これがお前のギルドパスだ。無くさないようにな」


 パスは首から引っ提げるタイプのもので、俺はそれを受け取ろうとすると、ダレルさんは手を差し出す。


 「50ガルボだ」


 渋々今もらったガルボをダレルさんに渡し、俺はギルドパスを受け取り自分の首に下げる。そして、残りのウサギを売り払い急いで入口の兵士にガルボを払いに行き奴隷になる言う恐怖から脱出することに成功する。こうして俺は冒険者として生きていくことになったのだ。

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