第23話 3分間の空白とはなんぞや


 3分間の空白。

 ダンナ、実は一回、死に掛かったことがあります。

 大もとの原因はまあ、バイクでの事故なのですが、死に掛かった言うんは直接それが原因なわけではありません。


 そう、大きな声では言われへんけど、それは明らかな医療ミス。

 あ、こちらに医療関係の読者様がおられましたら、ごめんなさい。別にみんながそうやとは申しておりませんので、ご容赦ください。

 みなさんが大変タイトなスケジュールの中、人命救助のために奮闘しておられることは、よーくわかっておるつもりです。


 さてさて。

 ダンナが私と出会う前からバイク好きやったことはお話ししましたが、それで一回事故に遭い、とある病院に運び込まれたんやそうです。

 なんやアレですね、そんなとこまでうちの弟その1と似ていて、なんやわろてまいますが。実は弟もえらいバイク事故をやらかしておりまして。

 まあ車と喧嘩してもうたわけですが、彼の場合はほんまそのまま、一回生死の境をさまよいました。

 今ではもうぴんぴんしてますが、あれでどうも頭のネジが一本、どこやら飛んでったらしくて、その前はもっと神経質なところもあったのに、すっかり「ま、ええや〜ん」という性格になってもうて。

 何があっても「ま、死なへん、死なへん」で済ます男に。

 なんかこう、全体に欲望のたがみたいなもんもゆるくなったように感じますし。とくに酒ね。止めるもんがおらんと、えらいことになることが。

 それはそれでちょっと姉としては心配やったりもします。

 ああ! そっちのお嫁さんにも謝らねばならん気になってきた……!


 ま、弟の話はええねん。

 で、ダンナ、入院した先で喉に入れられてた管の関係で血液が気管に入ったとかで心停止になったんやそうです。本来なら手術後、病室に戻ったらせねばならない処置を忘れられていたらしい。

 本人は真っ暗のなか、何が起こったのかまったくわからずにおり、翌日になって意識を取り戻した後に、同部屋やったほかの方のご親族から「あんた、大変やったんよ!」と教えられて初めて知ったらしい。


 そらもう、部屋のみんな外へ出されて、がーっと目隠しのついたてとか立てられて、看護士さんがダンナに馬乗りになって心臓マッサージしてって、大騒ぎになってたらしいし。

 同部屋のかた、医療関係の人やったもんで、はっきり「アレは医療ミスですわ」とおっしゃってたそうな。もしもダンナに万一のことがあったなら、「僕が証言に立とうと思ってましたわ」とおっしゃっていたと。


 こわ! 病院こわ!


 そんなことがあってもしれっとして、「あ、○さん大丈夫ですね」ってそ知らぬ顔で医者も看護士も通したらしい。

 ダンナもまあ「なんか変やな?」とは思ってたんですと。

 意識を取り戻したときに看護士さんが、カーテンの隙間からこそ〜っと黙ってダンナの様子を覗いてたんやそうです。

 まさに「生きてるわね? この人……」みたいな感じで!

 なんやそれ。


 まあお義父さんもあんな方なもんで、事実を知っても「ほんまかいな、えらいこっちゃ」てわろてはったらしいんですが。

 いや、お義父さん! わろてる場合とちゃいますがな!


 もしそこで万一のことが起こってしまっていたなら、私はダンナという人の存在すら知らんまま今に至っていることになります。もちろん娘なんぞ、影も形もありません。

 ダンナいわく、「●さんと出会ってなかったら、今頃バイクで死んどるやろうと思うわ」だそうな。

 なにしろ結構な年まで結婚もできず、「もう俺、結婚もできへんのやろなあ、一生ひとりなんやろなあ」と投げやりな気持ちにもなっていたので、あのまま新しいバイクでもうて乗り回して、そのうちまた事故なんかして、あっさり死んでてもおかしくなかったと思うんやそうな。

 勘弁してえな、もう。


 で、まあなんやかんやの後、ダンナは私と出会いまして。

 ほんで私は例の弟の事故のことがあったもんで、「私と結婚するんやったらバイクは乗らないでほしい」という鶴の一声(?)を発し。

 それによってダンナはバイクを処分し、それ以来一度も乗っておりません。

 そういうとこ、実は男らしい。うん。

 まあぽっちゃりやけども。


「それがなかったら、きっともう死んどるわ」


 とはよく言いますが、せやから勘弁してってばもう。

 バイクの事故はほんま怖いです。

 車もそら怖いけど、生身をさらしてあんな車道、よう走ってられるなあと思いますわ。

 お知り合いの方にも、それでお亡くなりの方もいらっしゃいますしね。

 別に無理な運転してたわけやなくとも、車とあたったら命もってかれるのはこっちやねんし。


 どうぞ皆さん、お気をつけてと申し上げます。

 生きててこそ、会える人がおりますぞ!


 と、今日はこんなお話でした〜。

 ではでは!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る