第9話 提督とはなんぞや
提督。
それは、艦隊の司令官。海軍の将官を意味する言葉ですね。
歴史で言うたら、あの黒船来航のペリーさんなんかもこれですわな。
けど、ここで言うところの「提督」は、ちょ〜っとそれとは意味が違います。
ここまで読んで「はは〜ん」と思った方は、きっともう分かってらっしゃいますよね。というか、アナタは多分「提督」仲間。
そう、それはとあるゲームをする人たちのこと。
艦隊とは言いますが、その戦艦やら巡洋艦やら駆逐艦やらがぜーんぶ、女の子になっとるっちゅう、あのゲームですな。
わたしたち夫婦は、ともにその艦隊司令官です。
そこの鎮守府に着任しとるわけです。
最初に始めたのはダンナの方が先でして、私はそれに追いすがる形で、ちょっとあとから始めました。
何がええって、これ、小説書く傍らででもできること。そこかいな。
まあ基本的にシミュレーションゲームやからね。じーっと見とく必要がないんは大いに助かります。RPGやとこうはいかんもんね。
これ書いてる今も、ダンナ、隣でやっております。
今日なんか、私の分までやってくれてはります。
え? 私はなにをしてんのかって?
そらもうアナタ、これ書いたり、絵ぇ描いたりしてますんですがな。やあねえ、もう。
なんちゅうて、日課であるクエスト以外のイベントが、私は基本的にめっちゃめんどくさいほうで。季節イベントともなると、わりとパソコン前に張り付いてイベント海域を制覇してゆかねばならなくなるからなんですが。
これがもう、面倒でいかん。そんなんするぐらいやったら小説かくし。
それでもゲームしてる意味ってあるんかいなあ。ようわからんけども。
ダンナはもともと、結婚する前からこうしたソーシャルゲームは好きな人やったんですが、私は環境もなかったのでそちらはノータッチでした。プレ○テとかは色々やってましたけどもね。
で、結婚後、とあるオンラインRPGを夫婦でやってた時期もあります。
基本的に、二人で同じゲームをやってると隣同士で助け合えるのが大いに便利。
いちいちチャットで「うしろ危ないよ!」とか「バフ(強化魔法)ちょうだい!」とか打ちこむのは大変ですが、これなら口で言えばええもんね。もちろん、マイク使って口頭チャットも可能なのですが、あれ、なんや恥ずかしくない? え、わたしだけ?
ともかくも、同じギルドのお友達にも、「ご夫婦で同じゲームやってるのうらやましい〜」ってよく言われておりました。
子供が生まれてからもやってましたけど、さすがにこのときばかりは、ダンナにちょっとイラついた。
なんでって、一緒に討伐レイドとかに参加している最中に、赤ん坊泣き出したらこっちも見ないで「泣いてるで」って言われるだけなもんで。本人パソコンの前から動かへんし。っちゅうか、急にいなくなったら他の人が困るので動かれへんわけですが。
でかいドラゴンとか倒してる最中に、いきなり背後の回復役とかバフ役とかが動かなくなったら、タンク(前衛)の人、困るでしょ?
まあそんなんで。
「『泣いてるで』やない! くっそう、むかつく!」
と、拳を握りしめて叫ぶ私。
ダンナ、びびる。
「えっゴメン、だってボク、おっぱいだけはあげられへんもん……」
まあ、そらそうやけども。いくらなんでも、男子にそこまで求めたらあかんもんね。
こう言われたら、「まあしゃあないか」と思うしかありませんでした。
ただまあ、見た目だけは、なんやうまいこと、あげられそうなおっぱいしてはるんやけどもね〜。うん、おしい。(なにがだ)
そういえば、ああいうオンラインRPGのゲームって、ゲームそのものをやってるだけでなくて、ゲーム内の街で座って、ただ人とお話だけしてる、なんてこともよくあります。むしろ、そういうのの方が楽しかったり。
いつだったかダンナ、たまたまクリスマスイブにそんな感じで他の誰か(妙齢の男子)とチャットしてたんやそうです。仮にAさんとします。
ダンナ「あ〜、今日イブだね。こんな日に家でこんなことしててええんかなあ」
Aさん「いいのいいの。どうせ彼女なんていないし〜。街に出たって、らぶらぶな奴ばっかでいらつくだけだからね〜」
お相手は多分関西の人ではないので、基本的には標準語です。
ダンナ「そうかあ。しょうがないね〜。じゃ、ぼくらはこっちでのんびり遊びにいきましょうか〜」
Aさん「うんうん、一緒に慰めあおうね!」
さて。
ここでAさん、はたととあることに思い至る。
Aさん「……いやまて。違う! ○さん(ダンナ)は妻帯者だ! だまされるな俺! ○さんはリア充! うわああ! リア充ばくはつしろ――!」
……うん。
がんばれAさん。
世界中のAさん、みんながんばよ。
はやく私のようなヲタでSなヨメを見つけんさい。……ちがうか。
で、「提督」の話。
これはもう、何年来やっているので、もう子供もよくわかっております。
そういえば、前にレア艦の子(いや見た目が女の子なもんで、やっぱり「子」って言っちゃうんですね)がイベント中に轟沈したとき、ダンナの部屋から悲鳴が聞こえてびっくりしました。
「お、俺の○○が、○○がああ……!」
って、「俺の」言うのやめんさい。
目の前にいるのが自分の妻やって、忘れてませんか。
まあ、その子、建造するのにものすごく苦労したのは知ってるので、慰めようもなかったですね〜。娘もちょっと苦笑いするほどの落ち込みようでしたしねえ。
とか言ってますが、実はその子、うちの艦隊ではぽろぽろできて、いっとき、6隻ぐらいいましたけどもね。アカウントによって、船ができる成功率が高いとか、ドロップ運がいいとか悪いとか、そういう設定があるのかないのか知りませんが。
だからダンナが私の代わりに私のイベントやってくれている時、よくこんなことも起こります。
「俺のとこ、何回いっても○▲(イベントで出るレア艦の子)でないのに、●さん(私)のとこは一回ででた……!」
「あ〜。またなん?」
とかいう、ちょっと可哀想な悲劇が。
わ〜、気の毒。
私は隣で、絵かいたり小説かいたりしてるだけだというのに。
代わりにイベントやってもらってて、ほんま濡れ手で粟ってやつですねえ。
こういうの、「日ごろの行い」って……言わないか。だってダンナのほうが明らかにそれはええもんね(自分で言うな)。
「なんでやあ! なんで○▲ちゃん、うちとこには
と、しょんぼりとへこんでる「ぽっちゃり提督」を、ちょっと生暖かい目で見やる、娘とヨメなのでした。にゃははは。
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