ガベッジ・オブ・オイルパンク
デバスズメ
石油王ドバド・バーデル
「バーデル様!新型重油騎兵の準備が整いました!」
石油騎士団長が報告する。
「フハハハ!これでアブラムヤシダケの地も余のものとなるか!戦の準備を急げ!」「ハッ!」
油圧機構で動く超大型兵器、重油騎兵。石油なき農村は一時で蹂躙されるであろう。
石油があればなんでもできる。人を買い、油圧機構を動かし、大地を支配する。石油こそが全てであり、石油を持つものが王であり、石油王こそが、この世の王なのだ。
石油、それは万能素材。燃やせば火がつくので生きていける。生きていけるのでみんなが欲しがる。みんなが欲しがるので石油王が世界の王。燃やす以外の使いみちは油圧機構とかいろいろある。
油圧機構、それは世界に広がる最大の技術。なんだか知らんが力を数倍から数十倍にする石油のパワーで動く機構であり、これさえあれば人力でロボットが動く。
世界を動かすのが油圧機構である限り、石油王は王たりえる。石油がわきでる土地を見つける限り、王として君臨し続ける。
油圧機構を動かすためには、汲み出した石油を精油しなければならない。精油のためには炭がいる。炭は外国から買うわけだが、石油があればいくらでも買える。炭では油圧機構は動かない。石油こそが、価値なのだ。
ドバド・バーデルは二代目の王である。初代王のガバガ・バーデルは、この地に油田を見つけ、石油王となった。父の遺産である油田を引き継いだバーデルにとって、目下の目標は次の油田だ。
油田は無限に石油がわきでる大地ではない、必ず限界が来る。故に、石油王たちは”掘り起こされていない土地”に目をつける。時には先住民を追い払う。バーデルの狙いはアブラムヤシダケの地下に眠る可能性がある石油だ。
然り、”眠る可能性がある油田”である、もしかしたら、その地下には何もないかもしれない。だが、何もしないわけにはいかない。王の責務として、国を維持するために、より多くの石油が必要であり、自国の領土ではいつ尽きるかわからないのだ。
だから、可能性があればそれに掛ける。先が見えないデスペラードは、奴隷も王も変わらない。
遠からず、アブラムヤシダケの地はバーデル国のものとなるだろう。石油がわきでるかどうかは、運と石油奴隷の働き次第だが。
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